若年成人男性の罹患率が高い毛巣瘻の治療方針をめぐって、外科手術後の創傷治癒に要する期間と再発率について議論が分かれている。そこで術後創傷を縫合する一次閉鎖術と、開放ドレナージ術との両治療法効果を判定するため、無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析が、アバディーン王立病院外科(英国)Iain J D McCallum氏らのグループによって行われた。BMJオンライン版2008年4月7日号、本誌2008年4月19日号より。
14歳以上の毛巣瘻患者をシステマティックレビューで無作為抽出
レビュー・解析対象の無作為化試験は、コクラン比較試験レジスタ、コクラン創傷群レジスタ、Medline(1950~2007)、Embase、CINAHL文献データベースから抽出され、14歳以上の毛巣瘻患者で、外科的療法を受けた者が無作為抽出された。
主要評価項目は、開放ドレナージ療法と一次創閉鎖療法のそれぞれについて、治癒に要した日数、手術部位感染症発症率および再発率。二次評価項目は、社会復帰に要した日数、合併症およびその罹病率、コスト、入院期間、創傷癒合率。また、閉鎖療法が選択された症例では、正中閉鎖と側方閉鎖のどちらが最適かを比較検討した。
一次閉鎖術は治癒は早いが高い再発率が代償となる
本研究には18の治験(n=1,573)が選択された。開放ドレナージと一次閉鎖術の比較が行われたのは、このうち12治験。
治癒に要した期間は一次閉鎖術のほうが短かった。手術部位の感染症発生率に差はなかったが、再発率は開放ドレナージのほうが低かった(0.66、95%信頼区間:0.42~0.26)。なお14例で、再発予防のため開放ドレナージが行われた。
外科的縫合手技(正中閉鎖と側方閉鎖)の比較は6治験対象で行った。その結果、正中閉鎖は側方閉鎖より治癒に要する期間が長いこと(平均差5.4日、95%信頼区間:2.3~8.5)に加えて、感染率も高く(相対危険度4.70、95%信頼区間:1.93~11.45)、再発リスクも高かった(ピート・オッズ比:4.95、95%信頼区間:2.18~11.24)。9例は手術部位感染症予防のために側切開の手技が行われ、さらに11例が再発予防の治療が必要とされた。
これらからMcCallum氏は、「開放ドレナージより一次閉鎖術のほうが短期間に治癒する。しかし再発リスクの増加は避けられない」とし、また「正中閉鎖よりも側方閉鎖のほうが優位なのは明らかだ。毛巣瘻治療で外科的オプションが適当と思われる場合は、側方閉鎖を標準治療とすべき」とまとめている。