膣尖部脱と腹圧性尿失禁を有した女性に対する、2つの手術法(仙棘靭帯固定術:SSLF、仙骨子宮靱帯挙上術:ULS)および周術期介入(骨盤底筋訓練、BPMT)の有効性、安全性を検討した結果、術後2年時点のアウトカムは、SSLFとULSのいずれも解剖学的、機能的アウトカム、または重大イベントのアウトカムについて有意な差は示されなかったことが明らかにされた。また、BPMTによるアウトカム改善効果(6ヵ月の排尿症状、2年時点の膣尖部脱アウトカム)も示されなかった。米国・クリーブランドクリニックのMatthew D. Barber氏らが無作為化試験の結果、報告した。米国では骨盤臓器脱(膣脱、子宮脱など)に対する手術が年間30万件以上行われており、SSLFとULSはいずれも米国では一般的に行われているが、有効性、安全性についての比較検討、および周術期介入によるアウトカム改善効果についても明らかではなかった。JAMA誌2014年3月12日号掲載の報告より。
SSLFとULSのアウトカム比較、周術期BPMT介入についても検討
研究グループはは、膣尖部脱と腹圧性尿失禁を有した女性における、(1)SSLFとULSのアウトカム比較、(2)周術期BPMTと標準ケアのアウトカム比較を目的に、2008~2013年に米国9つの医療施設で治療を受けた374例の女性患者を対象に2×2要因無作為化試験を行った。
被験者は無作為に、SSLF(186例)またはULS(188例)を受ける群に、また、周術期BPMT(186例)または標準ケア(188例)を受ける群に割り付けられ各介入を受けた後、追跡を受けた。
手術成功についての主要アウトカムは、2年時点の解剖学的成功で(1)膣尖部が膣管内または外へ3分の1以上突出していないこと、(2)膣突出に伴う不快な症状がないこと、(3)再手術が行われていないことであった。また周術期介入の主要アウトカムは、6ヵ月時点の排尿症状スコア(Urinary Distress Inventory[UDI]、スコア0~300で高スコアほど悪い)および解剖学的成功だった。
2年時点の追跡率は84.5%であった。
手術成功に有意差なし、BPMTによるアウトカム改善効果も有意差ない
結果、手術成功の割合は、ULS群59.2%(93/157例)vs. SSLF群60.5%(92/152例)で(補正前差:-1.3%、95%信頼区間[CI]:-12.2~9.6%)、有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:0.9、95%CI:0.6~1.5)。
重大有害イベント発生率も、ULS群16.5%(31/188例)vs. SSLF群16.7%(31/186例)で(補正前差:-0.2%、95%CI:-7.7~7.4%)、有意差はみられなかった(OR:0.9、95%CI:0.5~1.6)。
周術期BPMTは6ヵ月時点の排尿症状スコアを改善しなかった(補正後介入差:-6.7、95%CI:-19.7~6.2)。24ヵ月時点の膣尖部脱スコアも改善しなかった(同:-8.0、-22.1~6.1)。また、24ヵ月時点の解剖学的成功も有意差はみられなかった。
(武藤まき:医療ライター)