脳卒中対応救急車の導入による効果/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/09

 

 CT機器や遠隔医療接続装置などを備えた脳卒中対応救急車、通信指令係の段階でのスクリーニングなどの専門的システムの構築により、急性虚血性脳卒中に対する通報から血栓溶解療法開始までの所要時間は、有害イベントの増大なく15~25分短縮したことが報告された。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のMartin Ebinger氏らが、6,000例超について行った試験で明らかにした。JAMA誌2014年4月23・30日号掲載の報告より。

CTやポイント・オブ・ケア検査、遠隔医療接続を装備
 研究グループはベルリンにおいて2011年5月~2013年1月にかけて、CTやポイント・オブ・ケア検査、遠隔医療接続装置などを備えた脳卒中救急対応のための救急車「Stroke Emergency Mobile」(STEMO)の導入効果について検討するオープンラベルの無作為化試験「PHANTOM-S(Prehospital Acute Neurological Treatment and Optimization of Medical care in Stroke Study)」を行った。試験期間中に設定したSTEMO導入期間と非導入期間(コントロール)について比較し、専門的救急車導入ケアシステムが、血栓溶解療法の開始遅延を減少するかを評価した。

 STEMO導入時には、通信指令係の段階でアルゴリズムにより脳卒中をスクリーニングし、病院外脳卒中治療チームがケアを実行。虚血性脳卒中が確認され、禁忌症が除外された人については、ただちに血栓溶解療法が開始された。

 被験者は、脳卒中による救急搬送を要すると判断されベルリンにある14の脳卒中専門施設に搬送された6,182例だった。STEMO導入期間中の被験者は、平均年齢73.9歳、男性は44.3%、コントロール期間中の被験者はそれぞれ74.3歳、45.2%だった。

 主要アウトカムは、通報から血栓溶解療法を開始するまでの所要時間だった。

虚血性脳卒中への血栓溶解実施率、STEMO導入期間29%、コントロール期間21%
 結果、同所要時間は、STEMO導入期間中(3,213例)、およびSTEMO導入期間で実際に同システムが活用された人(1,804例)ともに、コントロール期間に比べ有意に短縮した。具体的には、コントロール期間群の平均同所要時間は76.3分に対し、STEMO導入期間群は61.4分、STEMO導入期間・活用群では51.8分と、コントロール期間群に比べそれぞれ15分、25分短縮した。

 また、虚血性脳卒中に対する血栓溶解療法の実施率についても、STEMO導入期間群は29%、STEMO導入期間・活用群では33%だったのに対し、コントロール期間群は21%と有意差がみられた(いずれも、p<0.001)。

 一方で、STEMO導入による脳内出血リスクの増大は認められなかった。STEMO導入期間・活用群のコントロール期間群に対する補正後オッズ比(OR)は0.42(95%信頼区間[CI]:0.18~1.03、p=0.06)だった。また、7日死亡率も減少したが、有意差はみられなかった(補正後OR:0.76、95%CI:0.31~1.82、p=0.53)。著者は、「さらなる検討を行い、臨床転帰への効果について評価することが必要だ」と述べている。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)