第3回 「腹部外傷のABC」
患者に頭部出血があったり意識混濁や意識レベルの低下がみられると、ついつい頭部の外傷ばかりに目がいってしまいます。しかしショックバイタルがあったら先ず腹部を疑うのが大原則です。腹部の外傷は受傷後長時間の経過観察が必要です。
出血と腹膜炎に注意して、視診・聴診・触診・打診に加えてFAST検査を再度、反復して実施するとともに、必要に応じてX線、CT検査を行ないます。また小児の腹部外傷は、成人とは異なる特徴がありポイントを抑えることが出来ます。
ドラマで再現した症例でポイントを理解しましょう。
【症例1】50代男性。酔っ払って歩行中に側溝に転落。脈拍:100/m、血圧:120/80mmHg、SpO2:98%。患者は頭部の疼痛を訴え出血も多く意識も混濁している。胸部および骨盤X線では重篤な症状が見られず、頭部CTを行ったところ検査途中から意識レベルが低下、、、慌てる研修医たちにDr.林は「ショックの原因検索」が大事と諭します。
【症例2】10歳男児.自転車走行中に交差点で自動車との接触事故に遭った.血圧:100/80mmHg,脈拍:90/m,SpO2:99%(15ℓリザーバー投与時),意識はクリア.交通事故外傷の診察に研修医は意欲を燃やすが患児は注射を嫌がって暴れ、ライン確保すら巧くできない.腹部にハンドル痕があるが疼痛(−)/FAST(−)のため研修医は「問題なし」として帰宅させたいが・・・。
第4回「骨盤外傷のABC」
防ぎ得る外傷死の頻度ナンバーワンは実は骨盤骨折と言われています。骨盤骨折を順序よく診断し治療出来なくてはなりません。整形外科や放射線科医との連携が必要になってくる場合もあり、Primary survey,secondary surveyのポイントをよく確認しておく事がとても大切です。
骨盤外傷を正しく診断し治療する為の戦略について解説します。
【症例1】45歳男性.歩行中に自動車にはねられた。意識は清明、脈拍:98/m、SpO2:99%(リザーバー10ℓ投与下),来院時血圧:100/70mmHg.Primary
surveyではX線/FASTともに重篤な出血や骨折が見つからない。しかし徐々にショック指数が高まり患者の容態も悪くなってゆく。Dr.林は検査所見にこだわる研修医に触診も大事であることを諭す。
【症例2】30代男性。バイクで走行中に滑って転倒した。意識レベル:JCSⅠI-10、血圧:80/50mmHg、脈拍:110/m、SpO2:99%(リザーバー10l投与下)。呼びかけに対しては反応するが意識は混濁しており話の内容は混乱している。全身の疼痛を訴える。初回FASTは陰性だが骨盤X線造影で不安定骨折と見られる所見あり。研修医はサムスリングを使用しようとするが・・・。