周術期に新規心房細動が認められると、術後長期の虚血性脳卒中リスクは1.3~2倍に増大することが判明した。同関連は、心臓手術よりも非心臓手術で大きいという。米国・ワイルコーネル大学医学部のGino Gialdini氏らが、約173万例について行った後ろ向きコホート試験で明らかにした。心房細動は虚血性脳卒中リスクを増大することが知られている。一方で、周術期心房細動は生理的ストレスへの過渡反応とみなされており、また発症後の長期脳卒中リスクについては不明であった。JAMA誌2014年8月13日号掲載の報告より。
病院の入院管理データを基に後ろ向きに調査
研究グループは2007~2011年にかけて、カリフォルニア州内の非連邦政府系急性期病院の入院管理データを基に検討した。手術を受けるために入院し退院時に生存が確認された人で、脳血管障害や心房細動の既往歴がない172万9,360例を対象に、周術期に新たに診断された心房細動と、長期脳卒中リスクについて分析した。なお、心臓手術を行った人と、それ以外の手術を行った人については、別々に分析した。
主要評価項目は退院後の虚血性脳卒中で、救急救命室での受診や、心房細動の診断記録のある入院記録から追跡を行った。
非心臓手術で周術期心房細動があると、術後虚血性脳卒中リスクは2倍に
結果、調査対象の入院時に、周術期心房細動が新たに見つかった人は2万4,711例で、全体の1.43%(95%信頼区間[CI]:1.41~1.45)だった。退院後に脳卒中を発症したのは1万3,952例で、全体の0.81%(同:0.79~0.82)だった。
Cox比例ハザード分析により、周術期心房細動は、非心臓手術・心臓手術ともに、術後虚血性脳卒中リスクの増大に関与していた。具体的に非心臓手術群では、術後1年の虚血性脳卒中発生率は、周術期心房細動が認められない人では0.36%(95%CI:0.35~0.37)だったのに対し、認められた人は1.47%(同:1.24~1.75)だった(ハザード比:2.0、同:1.7~2.3)。一方、心臓手術群では、術後1年の虚血性脳卒中発生率は、周術期心房細動が認められない人は0.83%(同:0.76~0.91)だったのに対し、認められた人は0.99%(同:0.81~1.20)だった(ハザード比:1.3、同:1.1~1.6)。
周術期心房細動と術後虚血性脳卒中リスクの関連は、非心臓手術者のほうが心臓手術者に比べ、有意に大きかった(交互作用検定p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)