ICU入室の重症患者への早期栄養療法について、経静脈ルート(静脈栄養法)と経腸ルート(経腸栄養法)を比較した結果、30日全死亡率などのアウトカムは同等であることが示された。低血糖症と嘔吐の発生については、静脈栄養療法群で有意に低率だった。英国・Intensive Care National Audit and Research Centre(ICNARC)のSheila E. Harvey氏らが、ICU患者2,400例について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。同早期栄養療法については、いずれのルートが最も効果的かについて明らかとなっていなかった。NEJM誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。
入院36時間以内~5日まで栄養療法を実施
検討は、英国33ヵ所のICUに緊急入室した成人重症患者2,400例を登録して行われた。
研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には早期静脈栄養を、もう一方には早期経腸栄養を、それぞれ入院36時間以内から行い最長5日まで継続した。
主要アウトカムは、30日後の全死亡率だった。
30日全死亡率は両群とも33~34%
被験者のうちデータが得られた2,388例(99.5%、静脈栄養群1,191例、経腸栄養群1,197例)について分析を行った。
30日全死亡率は、静脈栄養群が33.1%(393/1,188例)、経腸栄養群が34.2%(409/1,195例)であり、両群で同等だった(静脈栄養群の相対リスク:0.97、95%信頼区間:0.86~1.08、p=0.57)。
低血糖症の発生率については、静脈栄養群が3.7%(44例)に対し経腸栄養群が6.2%(74例)、嘔吐はそれぞれ8.4%(100例)と16.2%(194例)と、いずれも静脈栄養群で有意に低率だった(それぞれp=0.006、p<0.001)。
しかしながら、平均治療感染性合併症件数(0.22vs. 0.21、p=0.72)や90日死亡率(37.3%[442/1,184例]vs. 39.1%[464/1,188例]、p=0.40)、およびその他14項目の副次アウトカム、有害事象発生率については、両群で有意差は認められなかった。
なお、両群のカロリー摂取量は類似しており、いずれもほとんどの患者で摂取目標値には達しなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)