思春期の脳性麻痺患者のQOLは低くない/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/24

 

 思春期の脳性麻痺患者は、一般集団の青少年と比べ、「友人・知人による社会的支援」の1分野の生活の質(QOL)においてのみスコアが低かった。また、子供時代や思春期の痛みが、多くの分野の思春期QOL低下と関連していた。英国・ニューカッスル大学のAllan Colver氏らが、欧州の脳性麻痺患者登録名簿を基に行った縦断的分析と横断的分析の結果、報告した。これまでの研究結果から、QOLの自己申告ができる脳性麻痺の子供は障害のない子供と比べ、QOLの程度は同等であることが示されていた。Colver氏らは、思春期患者の傾向については報告されていなかったことから、本検討を行ったという。Lancet誌オンライン版2014年10月7日号掲載の報告より。

思春期脳性麻痺患者のQOLと、障害の程度や子供時代QOLなどの関連を分析
 研究グループは2004年、欧州9地域の8~12歳の人口ベース脳性麻痺患者登録名簿の中から、818例の患児を無作為に抽出した。そのうち500例について、子供のためのQOL調査票「KIDSCREEN」によりQOL(10領域)を、また痛みの頻度や、「Strengths and Difficulties Questionnaire」で精神的問題を、「Parenting Stress Index」で保護者の育児ストレスの測定を行った。

 2009年には、そのうち追跡が可能だった13~17歳の355例(71%)と、さらに加わった思春期の76例、合わせて431例について、自己申告によるQOL調査を行った。

 調査で得られたQOLについて、一般集団のマッチング・コントロール群と比較した。

 多変量分析を行い、思春期脳性麻痺患者のQOLとその障害の程度、また子供時代のQOLや精神的問題、親の育児ストレスとの関連を分析した。

子供時代や思春期の痛み、思春期QOL8分野の低下と関連
 その結果、障害の重症度と思春期のQOL低下との有意な関連が認められたのは、「気分と感情」「自律性」「友人・知人による社会的支援」の3分野のみで、最も軽症の群と最も重症の群の較差は、おおむね標準偏差(SD)0.5未満だった。

 また、脳性麻痺患者の思春期QOLは、一般集団に比べ、「友人・知人による社会的支援」の1分野においてのみ有意に低かった(同分野の平均差:-2.7、95%信頼区間:-4.3~-1.4)。
 
 子供時代や思春期の痛みは、8分野における思春期QOL低下と強い関連が認められた。子供時代のQOLは、思春期QOLの一貫した予測因子だった。子供時代の精神的問題や保護者のストレス、およびそれらが子供時代から思春期に悪化することは、思春期QOLがわずかだが低下する予測因子だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)