手指運動併用でRA患者の機能改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/28

 

 手指の関節リウマチ(RA)の治療において、標準的な薬物療法に手指の運動プログラムを併用すると、標準治療単独に比べ手指機能が有意に改善され、費用効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のSarah E Lamb氏らが行ったSARAH試験で示された。疾患修飾性の生物学的製剤などによる薬物療法レジメンは、手指RAの疾患活動性を大きく改善し関節破壊を最小のものとするが、これに相応の機能やQOLの改善が得られるとは限らないという。個々の患者に合わせた手指の運動が、機能のさらなる改善効果をもたらす可能性が指摘されているが、これを支持するエビデンスはこれまでなかった。Lancet誌オンライン版2014年10月10日号掲載の報告。

運動療法の併用効果を無作為化試験で評価
 SARAH試験は、種々の薬物療法を受けている関節リウマチ患者において、手指や腕の運動プログラムの併用の有効性および費用効果を評価するプラグマティックな無作為化試験。対象は、手指の痛みおよび機能障害を有し、安定的な薬物療法を3ヵ月以上受けているRA患者である。

 被験者は、通常治療に加え手指の運動プログラムを行う群または通常治療のみの群に無作為に割り付けられた。運動療法群の患者は、理学療法士または作業療法士による6回の対面セッションを受けたほか、個々の患者に合わせた運動を自宅で毎日、12週以上行うこととした。7種の可動性運動と、4種の筋力強化あるいは持久力運動が含まれた。

 患者と理学療法士、作業療法士には治療割り付け情報はマスクされなかったが、アウトカムの評価担当者と研究者にはマスクされた。主要評価項目は、12ヵ月時のミシガン手の質問表(Michigan Hand Outcomes Questionnaire:MHQ)の手指機能スコア(0~100点、点数が高いほど機能良好)であった。

ADL、作業も有意に改善
 2009年10月5日~2011年5月10日までに、英国の17施設に490例が登録され、運動療法群に246例が、通常治療群には244例が割り付けられた。このうち438例(89%)で12ヵ月のフォローアップデータが得られた。データ収集前に脱落した通常治療群の2例は解析から除外された。

 運動療法群の平均年齢は61.3歳、女性76%、白人97%で、診断後の経過期間中央値は10年、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のうち生物学的製剤の投与を受けていたのは21%、非生物学的製剤の併用療法が29%、単剤療法が42%であった。通常治療群はそれぞれ63.5歳、76%、98%、10年、22%、22%、49%であった。

 12ヵ月時のMHQ手指機能スコアのベースラインからの変化は、運動療法群が7.93点であり、通常治療群の3.56点に比べ有意に改善した(平均群間差:4.28点、95%信頼区間[CI]:1.49~7.06、p=0.0028)。

 12ヵ月時のMHQ日常生活動作(ADL)スコア(両手を合わせた点数、5.89 vs. 2.27点、平均群間差:3.48点、95%CI:0.31~6.66、p=0.0321)、MHQ作業スコア(8.12 vs. 3.11点、同:4.62点、0.82~8.42、p=0.0175)およびMHQ総スコア(7.59 vs. 4.22点、同:3.21点、0.53~5.89、p=0.0195)には運動による有意な改善効果が認められたが、痛み(p=0.1814)、満足度(両手、p=0.0784)、美容(両手、p=0.5933)に有意差はなかった。

 重篤な有害事象が103件報告されたが、治療関連の重篤な有害事象はなかった。一方、運動療法に要した患者1人当たりの費用は156ポンドであった。フォローアップ期間中に使用された医療資源を考慮すると、運動療法群は通常治療群よりも平均103ポンド高額であった。EuroQol EQ-5Dで評価した質調整生存年(QALY)を1年延長するのに要する費用は9,549ポンド、Short-Form(SF)-6Dで評価した場合は7,440ポンドだった。

 著者は、「手指の運動プログラムは、種々の薬物療法レジメンの補助療法として十分に価値があり、低費用の介入法である」と結論し、「本研究は、厳格な方法論に基づく大規模試験であり、質の高いエビデンスをもたらすもの」としている。

(菅野守:医学ライター)