ベルギー、ルーヴェン・カトリック大学のBen Van Calster氏らは、卵巣がんの良性または悪性を識別する術前のリスク予測モデル「Assessment of Different NEoplasias in the adnexa(ADNEX)」を開発した。10ヵ国24施設5,909例の患者の協力を得た開発・検証の前向き診断試験において、良好に識別したことを報告。また、同モデルにより、良性、境界悪性、ステージI浸潤、ステージII~IV浸潤、および二次性(転移性)腫瘍を識別できたという。著者は、「ADNEXモデルは、患者トリアージおよび治療方針を改善し、付属器関連の罹患率および死亡率に大きな影響を及ぼすだろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年10月15日号掲載の報告より。
10ヵ国患者5,909例のデータからADNEXモデル開発
ADNEXモデルは、10ヵ国の超音波検査センター24ヵ所で前向きに収集した臨床および超音波検査データを用い、観察診断試験にて開発・検証試験が行われた。
対象患者は付属器を含む卵巣に腫瘤があり、術前に標準化超音波検査を受けた女性。1999~2007年に登録した3,506例のデータを基にモデルを開発し、2009~2012年に登録した2,403例を対象に検証試験を行い、その後5,909例全員に対してアップデートを行った。
主要評価項目は、腫瘍の組織学的分類と手術ステージであった。
良性と悪性、および4種の悪性サブタイプを識別
開発されたADNEXモデルには、3つの臨床予測因子(年齢、血清CA-125値、施設タイプ[がんセンターvs.その他病院])と6つの超音波所見予測因子(病変部最大径、固形腫瘍比率、嚢胞が10超、乳頭状隆起数、音響陰影、腹水)が含まれた。
ADNEXモデルの良性および悪性腫瘍の基本的な識別能は、ROC曲線下面積(AUC)で評価した結果、開発群0.954(95%信頼区間[CI]:0.947~0.961)、検証群0.943(同:0.934~0.952)であった。識別能は、施設による違いはみられなかった。
またADNEXモデルは、良性vs.境界悪性(検証群でのAUC:0.85)、良性vs.がんステージI(同:0.92)、良性vs.がんステージII~IV(同:0.99)、良性vs.二次性転移(同:0.95)を識別した。
悪性サブタイプ間のAUCは0.71~0.95にわたり、境界悪性vs.がんステージIは0.75、がんステージII~IV vs. 二次性転移は0.82であった。
検定曲線は、算出推定リスクが正確であることを示した。
(武藤まき:医療ライター)