英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのMaria Kyrgiou氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果、子宮頸部上皮内腫瘍における頸部切除が、妊孕性に悪影響を与えるとのエビデンスは示されなかったが、妊娠第2期の流産リスクの有意な増加と関係していたことが明らかにされた。著者は、さらなる検討を行い、この流産リスク増大のメカニズムを調べること、また妊孕性および妊娠早期のアウトカムへの治療の影響について、切除サイズや用いる治療法の層別化を行うべきであると提言した。BMJ誌オンライン版2014年10月28日号掲載の報告より。
メタ解析で、治療後vs.未治療女性の妊娠率、流産率などを分析
これまでの検討で、子宮頸部上皮内腫瘍に対する治療は未熟児出産リスクを増大し、そのリスクは切除の深度が大きいほど増大することが知られている。一方で、大規模な後ろ向きコホート研究により、治療を受けた女性のほうが未治療集団よりも妊娠する割合が高いとの報告や、また最近の大規模症例においては、円錐切除術を受けた患者は、未治療正常あるいはコルポスコピー診後は未治療であった女性と比べて、妊娠までに時間を要することが報告されていた。
研究グループはコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析により、頸部切除の妊孕性および妊娠早期(24週未満)のアウトカムへの影響を調べた。
Medline、Embaseを対象ソースとし、子宮頸部上皮内腫瘍の治療歴がある女性vs. 未治療女性で妊孕性と妊娠早期アウトカムについて評価をしていた試験を適格とした。
特定した試験データを、治療のタイプと妊孕性および妊娠早期アウトカムで分類し評価した。妊孕性の評価項目は、総妊娠率、妊娠を望む女性における妊娠率と妊娠までに要した期間など。妊娠早期アウトカムの評価項目は、妊娠第1期(12週未満)、第2期(12~24週)、全期間(24週未満)での流産率、子宮外妊娠率、中絶率などであった。評価は、ランダム効果モデルでプール相対リスクと95%信頼区間(CI)を算出して行った。また、試験間の不均一性についてI
2統計量で評価した。
有意差が認められたのは、治療と妊娠第2期の流産リスク増大の関連
検索により適格基準を満たした15試験が解析に組み込まれた。
メタ解析の結果、子宮頸部上皮内腫瘍の治療は妊孕性に悪影響を与えるというエビデンスは示されなかった。
全体の妊娠率は、治療を受けた女性が未治療女性よりも高率だったが(4試験;43%vs. 38%、プール相対リスク:1.29、95%CI:1.02~1.64)、試験間の不均一性が大きかった(p<0.0001)。
また妊娠率について、妊娠を望む女性間で検討した場合、治療群と未治療群の差はみられず(2試験;88% vs. 95%、0.93、0.80~1.08)、妊娠を望んでから妊娠するまでに12ヵ月超を要した女性間で検討した場合も、治療群と未治療群間で有意差は示されなかった(3試験;15%対9%、1.45、0.89~2.37、p=0.14)。
流産率は、全期間(10試験;4.6% vs. 2.8%、1.04、0.90~1.21)、妊娠第1期(4試験;9.8% vs. 8.4%、1.16、0.80~1.69)では、治療群と未治療群の差はわずかであったが、妊娠第2期については、治療と流産リスク増大との有意な関連が認められた(8試験;1.6% vs. 0.4%、2.60、1.45~4.67)。
また、子宮外妊娠率(6試験;1.6%対0.8%、1.89、1.50~2.39)、中絶率(7試験;12.2% vs. 7.4%、1.71、1.31~2.22)も、治療を受けた女性で高率であった。