腎移植後患者に対するシロリムス免疫抑制療法は、がん発症リスクを40%、非黒色腫皮膚がんリスクについては56%、それぞれ低下する一方で、死亡リスクについては43%増大することも明らかになった。カナダ・オタワ大学のGreg A. Knoll氏らが、約6,000例の腎移植患者のデータをメタ解析した結果、報告した。これまでに発表されたメタ解析では、シロリムス投与とがんや死亡リスクについては、有意な関連は認められていなかったという。BMJ誌オンライン版2014年11月24日号発表の掲載より。
21試験、被験者総数5,876例についてメタ解析
メタ解析は、Medline、Embase、比較対照試験を収載したCochrane Central Register of Controlled Trialsに2013年3月までに収載された論文を検索して行われた。腎移植、または膵・腎移植の患者を対象に、シロリムスによる免疫抑制療法について行った無作為化比較試験を適格とした。
患者個人レベルの情報が得られ、がん発症と生存についての記載があった21試験、被験者総数5,876例について解析した。
シロリムス投与で非黒色腫皮膚がんリスクは56%減
結果、シロリムスは、がん発症リスクを40%減少し(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.39~0.93)、非黒色腫皮膚がんリスクを56%減少することが認められた(同:0.44、0.30~0.63)。
最も顕著にがんリスク減少が認められたのは、確立した免疫抑制療法からシロリムス免疫抑制療法に変更した人で、がん発症リスクは66%(同:0.34、0.28~0.41)、非黒色腫皮膚がんリスクは68%(同:0.32、0.24~0.42)、またその他のがん発症リスクは48%(同:0.52、0.38~0.69)、それぞれ減少した。
一方でシロリムスは、死亡リスクを1.43倍増大した(同:1.43、1.21~1.71)。
これらを踏まえて著者は、「シロリムスは、移植レシピエントのがん、非黒色腫皮膚がんリスクを減少した。その有益性は確立した免疫抑制療法からシロリムスに変更した患者で最も顕著だったが、死亡リスクが増大するという点で、腎移植患者に一般的に用いるのは適切ではないと思われる」と述べ、「さらなる検討を行い、集団の違い(たとえば、がんリスクが高い患者など)でシロリムスによるベネフィットが認められるかを調べる必要がある」と述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)