小児の低流速血管奇形(slow-flow vascular malformation)に対しシロリムスは有効なのか。シロリムスは、その有効性のエビデンスが不足しているにもかかわらず、さまざまな血管奇形の治療に用いられるようになっている。フランス・トゥール大学のAnnabel Maruani氏らは、観察フェーズの無作為化試験「PERFORMUS試験」によって、6歳以上の子供にシロリムス療法を開始する際の患児および家族の目標を明確にすることができたと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年9月15日号掲載の報告。
シロリムスは小児の複合奇形で疼痛、ウージング、出血を有意に低減
PERFORMUS試験は、低流速血管奇形児に対するシロリムスの有効性と安全性を評価し、治療の適応症をより明確に描出することを目的とし、多施設非盲検にて行われた。
対象は、低流速血管奇形を有する6~18歳の患児で、2015年9月28日~2018年3月22日にフランスの3次医療センター11施設で59例が集められた。
被験者は、観察期間を経た後、介入期間に切り替えられ、経口シロリムス(血清目標値4~12ng/mL)の投与を受けた。介入期間の切り替え時期は、4ヵ月時から8ヵ月までに無作為に割り付けられた。各患者の全試験期間は12ヵ月間とした。
2019年12月4日~2020年11月10日にintent-to-treatベースで統計解析を実施。主要アウトカムは、単位時間当たり(すなわち、介入期間と観察期間の間)のMRIで検出された血管奇形容量の変化で、副次アウトカムは、主観的評価項目(疼痛、出血、ウージング、QOLなど)および安全性であった。
シロリムスの小児の低流速血管奇形に対する有効性と安全性を評価した主な結果は以下のとおり。
・被験者(女児35例[59.3%]、平均年齢11.6[SD 3.8]歳)において、22例(37.3%)がpure静脈奇形、18例(30.5%)が嚢胞性リンパ管腫、19例(32.2%)が複合奇形であった(症候群型を含む)。
・MRIで検出された期間と関連する血管奇形容量のばらつきには、全体的に有意差は認められなかった。介入期間と観察期間の差は、すべての血管奇形については平均-0.001(SD 0.007)、静脈奇形は0.001(0.004)、複合奇形は0.001(0.009)であった。
・一方でpure静脈奇形について、小児における有意な容量減少が観察された(平均群間差:-0.005[SD 0.005])。
・全体に、シロリムスは、とくに複合奇形における疼痛、および、出血、ウージング、自己評価の有効性、QOLにポジティブな影響があった。
・シロリムス治療期間中、56例の患者が231件の有害事象を経験した(5件が重篤有害事象、命に関わる有害事象は0件)。最も頻度の高い有害事象は、口腔潰瘍(患者29例[49.2%])であった。
・リンパ管腫、ウージング、出血が減少しQOLは向上したというエビデンスから、pure静脈奇形がシロリムス治療の最適症例であることが示唆された。
・複合奇形では、シロリムスは疼痛、ウージング、出血を有意に減少させた。
・症状に基づいた場合は、その他2つのサブグループよりもpure静脈奇形のほうが、ベネフィットは低いようだった。
(ケアネット)