英国・リーズ大学のStephen J Chapman氏らは、外科手術無作為化試験について早期に中断した試験、および未公表の試験がどれくらい存在するのかを調べた。その結果、早期中断率は21%であり、完了後に結果を公表した試験は66%であったことなどを明らかにした。著者は、外科手術試験は実行に困難が伴い資金もかかるが、今回の調査で資源の浪費の証拠が見つかったとして、リスクを覚悟で協力してくれる患者への倫理的観点からも、試験の効率や透明性を高めるために、研究ガバナンスのフレームワークを変えていく必要があると指摘している。BMJ誌オンライン版2014年12月9日号掲載の報告。
ClinicalTrials.govデータベースで登録、公表試験を調査
研究グループは、外科手術無作為化試験の早期中断率と未公表率を調べるため、登録された試験と公表された試験を横断的観察研究にて調べた。ClinicalTrials.govデータベースにて、2008年1月~2009年12月に登録されたインターベンショナルな試験について「手術(surgery)」をキーワードに、非小児科部門の第III~IV相臨床試験を検索した。ピアレビュー誌に発表された試験も系統的に探索した。見つからない場合はClinicalTrials.govデータベースに記録された結果を探索した。
また、中断試験および完了後未公表試験について、その理由が開示されていない場合は、担当研究者に電子メールを送った。
5件に1件が中断、完了後も3件に1件が未公表
キーワード検索(手術)で818件の登録試験が見つかった。そのうち適格基準を満たした395件について分析した。
早期に中断となっていた試験は21%(81/395件)で、その理由は「被験者の充足不足(44%、36/81件)」が最も多かった。
一方、完了試験314件(79%)のうち、公表していたのは66%(208/314件)であった。試験完了から発表までの期間中央値は4.9年(範囲:4.0~6.0年)であった。
ピアレビュー誌に発表がなく、ClinicalTrials.govデータベースにおいて結果が見つかった試験は6%(20/314件)存在した。
資金提供と試験中断の有意な関連は認められなかったが(補正後オッズ比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.54~1.55、p=0.735)、資金提供は完了試験の公表率の低さと有意な関連がみられた(同:0.43、0.26~0.72、p=0.001)。
また、試験研究者の電子メールアドレスが見つかった割合は、中断試験群は71.4%(10/14件)、未公表試験群は83%(101/122)であった。しかし実際に連絡が取れて回答が得られたのは、それぞれ43%(6/14件)、20%(25/122件)にとどまった。回答が得られたのは、紙媒体で公表されていた試験11件と、その他で公表されていた5件(うち4件はピアレビュー誌のインデックスにはなし)、未公表試験では9件であった。
これらの結果を踏まえて著者は、「外科手術無作為化試験は、5件に1件が早期中断になっており、3件に1件は完了後も未公表であった。そして未公表試験の研究者と接触できない頻度が高かった。今回の結果は、研究資源が浪費されている実態を示すものである。臨床データの隠蔽や、リスクを負って治験に参加した患者の協力が無駄になっており、倫理的懸念をもたらすものである」と述べ、「試験の効率性、透明性を高め、こうした懸念を払拭する研究ガバナンスのフレームワークを構築していかなければならない」と提言している。