リンパ節転移陰性HER2陽性乳がんで、腫瘍最大径が3cm以下の人に対し、パクリタキセルとトラスツズマブによる補助療法は、早期再発リスクは約2%であることが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らが、406例を対象に行った試験で明らかにした。これまでの主なトラスツズマブ補助療法の試験では、腫瘍径が小さい患者の多くは被験者として不適格であったため、同患者群に対する標準治療がないという。NEJM誌2015年1月8日号掲載の報告より。
パクリタキセル+トラスツズマブを12週、トラスツズマブを9ヵ月投与
Tolaney氏らは、リンパ節転移陰性HER2陽性乳がんで腫瘍最大径が3cm以下の406例を対象に、パクリタキセルとトラスツズマブによる補助療法について、非対照単群試験を行った。
被験者には12週間にわたりパクリタキセルとトラスツズマブを投与し、その後9ヵ月間トラスツズマブ単剤投与を行った。
追跡期間の中央値は4.0年。主要評価項目は、浸潤がんのない生存だった。
浸潤がんのない3年生存率は98.7%
その結果、浸潤がんのない3年生存率は98.7%だった(95%信頼区間[CI]:97.6~99.8%)。再発が認められたのは12例で、そのうち乳がんの遠隔転移は2例だった。
HER2陰性対側乳がんと非乳がんのがんを除外すると、疾患特異的イベントは7件だった。
グレード3のニューロパチーが1件以上認められたのは、13例(3.2%、95%CI:1.7~5.4%)。症候性うっ血性心不全が認められたのは2例(0.5%、同:0.1~1.8%)で、両者ともトラスツズマブ投与中止により左室駆出率は正常に戻った。
また、同試験で規定していた、重大な無症候性駆出率低下が認められたのは13例(3.2%、同:1.7~5.4%)だった。しかし、そのうち11例はトラスツズマブ投与を短期中断後、同療法を再開継続できた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)