選択的なアウトカムの報告は、臨床試験およびシステマティックレビューの結果の妥当性に対する重大な脅威とされる。これまでに試験プロトコルと発表論文を比較した実証研究から、多くのアウトカムが選択的に報告されていることが示唆されている。そこで米国・スタンフォード大学のJohn P A Ioannidis氏らは、早産児介入のシステマティックレビュー論文および組み込まれた無作為化試験において、同集団で最も重大な臨床アウトカムの慢性肺疾患に関する情報が、どのように散見されるかを検討した。その結果、レビュー論文で慢性肺疾患について報告していたのは半数弱(45%)であり、同データを報告していた試験は31%のみであったことを明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年1月26日号掲載の報告より。
早産児介入評価を全Cochraneシステマティックレビュー
検討は2013年11月時点で、Cochrane Database of Systematic Reviewsをデータソースとし、早産児への介入を評価した論文を検索する全Cochraneシステマティックレビューにて行われた。検索されたレビュー論文のうち、慢性肺疾患に関する「情報がみられた」および「報告をしていた」論文数、および慢性肺疾患について報告していたシステマティックレビュー包含中の無作為化試験数を特定し評価した。
また、慢性肺疾患の報告がなかったシステマティックレビュー10本と、あらゆるアウトカムを報告していた同10本を無作為に選択し、慢性肺疾患に関する情報が、それらに組み込まれた無作為化試験の主要報告にはみられるが、システマティックレビューにはみられないかどうかについて特定した。
主要評価項目は、入手できた慢性肺疾患アウトカムが、集団や介入のタイプで異なるかどうか、また、未報告のデータが試験報告から入手可能であるかどうかとした。
同集団で重大視される慢性肺疾患アウトカムを報告した包含試験は31%
全Cochraneシステマティックレビューにより、早産児に関連したシステマティックレビュー論文(以下、レビュー論文)174本、試験数1,041件が検索された。
このうち、慢性肺疾患に関する「情報がみられた」レビュー論文は105本(60%)、「報告をしていた」レビュー論文は79本(45%)であった。
また試験1,041件のうち、生後28日時点の慢性肺疾患データを報告していたのは202件、生後36日時点の同データを報告していたのは200件で、あらゆる定義の慢性肺疾患を報告していた試験は320件(31%)であった。
集団別分析からは、「情報がみられた」「報告をしていた」レビュー論文は、単に早産児を対象としたものよりも、呼吸障害児(distressまたはsupport)を対象としたもののほうが、有意に多いことが判明した(p<0.001)。
対象児への介入(薬物療法、栄養療法、呼吸器装着など)は有意に異なっていた(p<0.001)。呼吸器装着介入児を対象とした試験は86件あったが、そのうち慢性肺疾患について報告していたのはわずか48件(56%)であった。
レビュー論文を無作為に選択した検討からは、包含されていた試験84件のうち、慢性肺疾患アウトカムの報告がないものは45件(54%)あり、またそうした情報を主要報告で述べていたのは、わずか9件(20%)であった。
著者は、「慢性肺疾患のアウトカムデータがシステマティックレビューで報告されていない場合は、主要試験報告でもそれらは報告されていなかった」と、重大アウトカムに関する情報が包含試験の大半で欠落していることを指摘した。そのうえで、「全試験の初期設定で収集・報告された標準化臨床アウトカムの使用が検討されるべきであろう」と提言している。
(武藤まき:医療ライター)