ドイツで2011年に施行された「医薬品市場再編法(AMNOG)」に則って作成された新薬試験結果の公開資料は、ClinicalTrials.govなどそれ以外の公開資料と比べて、試験方法・結果に関する完全報告の割合が高いことが示された。なかでも、部分母集団の分析結果の報告については、非AMNOGでは完全報告の割合がきわめて低かったという。ドイツ医療品質・効率性研究機構(Institute for Quality and Efficiency in Health Care、IQWiG)のMichael Kohler氏らが分析し発表した。BMJ誌オンライン版2015年2月26日号掲載の報告。
約2年間の新薬に関する報告の質を調査
研究グループは、AMNOGに基づきIQWiGが2011年1月~2013年2月までに作成した、新薬に関する評価資料について調査を行った。また、欧州公開医薬品審査報告書(EPAR)やClinicalTrials.govといったレジストリなどの公表資料についても調査し、両者の新薬に関する試験報告内容の質を比較した。
結果項目の完全報告、AMNOGは90%、非AMNOGは52%
27件のうち適格基準を満たした15件の資料一式(22試験分)を分析の対象とした。
15件の資料には15の試験集団と13の承認された部分母集団の、計28の評価が含まれていた。すべての対象薬物について、EPARは入手できた。学術誌公表文献は15の薬物のうち14、22試験のうち21件について入手できた。また、すべての薬物および試験のClinicalTrials.gov登録報告が入手できたが、結果が入手できたのは11件のみであった。
被験者全体を対象にした評価についてみた結果、AMNOGの資料では、試験方法と結果項目について、約90%が完全報告をしていた。一方、非AMNOG資料の報告の質は、試験方法について完全報告をした割合は75%、結果項目については52%だった。学術誌での完全報告の割合は最も高く、EPARが続いた。
承認された部分母集団の評価については、結果項目の完全報告の質は劣っていた。とくに非AMNOG資料ではきわめて低率で、試験結果全体について完全報告をした割合はAMNOG資料の71%に対し、非AMNOG資料は11%、患者に関する結果については70%に対し5%であった。
研究グループは「今回の分析はサンプルサイズが小さく限定的である」としたうえで、「従来の公開ソースは新薬に関する情報提供が、とくに部分母集団の患者関連アウトカムについて不十分である。この種の情報は、英語資料は限定的だが大半がAMNOGで入手できるものだ」と述べ、「AMNOGアプローチは、臨床試験統合公開モデルの開発に国際的に用いることが可能であり、キーオープンアクセス手法として用いることができるだろう」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)