乳房生検について、病理医による診断vs. 参照診断の一致率は75.3%であったことが、米国・ワシントン大学のJoann G. Elmore氏らにより報告された。検討は、病理医115人が行った240症例のスライド標本の診断6,900件について、3人のエキスパート病理医から成るコンセンサスパネルが下した診断との一致を調べて行われた。一致率は、浸潤がんで高く、非浸潤性乳管がん(DCIS)や異型過形成では低いことも判明した。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、これら一致率と患者マネジメントとの関連について理解をする必要がある」と述べている。乳房の病理診断の結果は、治療やマネジメント決定の根拠となるが、その精度については十分に解明されていなかった。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。
エキスパートのコンセンサスパネルとの一致率を調査
検討は、病理医とコンセンサスパネルの診断とを比較してその不一致度を定量化すること、患者と病理診断医の特徴を評価することを目的とし、米国内8州の臨床現場で乳房生検の病理診断を行っている病理医に参加を呼びかけて行われた。参加者はそれぞれ2011年11月~2014年5月に、60個の乳病生検のスライド標本セット(総計240症例、1症例ごとに1つのスライド標本)を診断した。症例には浸潤性乳がん23例、DCIS 73例、異型過形成72例、良性72例が含まれていた。
参加病理医に対して、他の病理医やコンセンサスパネルの診断については知らされなかった。
コンセンサスパネルにおける病理診断の一致率は75%で、コンセンサスにより導き出された参照診断率は90.3%であった。
主要評価項目は、参照診断との比較による過剰診断率および過小診断率とした。
診断数が少ない、従事現場が小規模、非アカデミックで不一致率が高い
691例の病理医に参加を呼びかけ、適格基準を満たし承認を得ることができた65%が試験に参加した。そのうち91%(115人)が試験を完了し、6,900件の診断が提出された。
参照診断と、試験参加病理医診断との全一致率は75.3%(95%信頼区間[CI]:73.4~77.0%、5,194/6,900件)だった。浸潤がん症例(提出診断663件)は、一致率は96%で、不一致の4%は過小診断例だった。DCIS症例(2,097件)は、一致率84%で、3%が過剰診断、13%が過小診断だった。異型過形成(2,070件)は、一致率48%で、17%が過剰診断、35%が過小診断だった。また、異型過形成のない良性症例(2,070例)は、一致率87%で、13%は過剰診断だった。
参照診断との不一致は、先行して行われたマンモグラフィにおける乳腺濃度が高値の患者(122例)のほうが、低値の患者(118例)と比べて統計的に有意に高かった(全一致率は73% vs. 77%、p<0.001)。
また、不一致率が統計的に有意に高かった病理医の特徴として、1週間に行う病理診断数が少ない(p<0.001)、規模の小さな臨床現場(p=0.034)や非アカデミックな現場(p=0.007)に従事していることが示された。
(武藤まき:医療ライター)