未治療の高齢者または併存疾患を有する慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療において、標準治療薬であるクロラムブシル(国内未承認)にオファツムマブ(商品名:アーゼラ)を併用すると、臨床転帰が大きく改善され副作用プロファイルは管理可能であることが、英国・セントジェームズ大学病院のPeter Hillmen氏らが行ったCOMPLEMENT 1試験で示された。若年者や他の疾患がみられないCLL患者の標準治療は、プリン類似体であるフルダラビンをベースとする多剤併用レジメンであるが、高齢者や併存疾患を有する患者の多くは耐用不能である。オファツムマブは、リツキシマブとは異なる作用機序を持つヒト型抗CD20モノクローナル抗体であり、臨床試験でフルダラビン抵抗性CLLへの有効性が確認されている。Lancet誌オンライン版2015年4月13日号掲載の報告より。
併用の効果と安全性を無作為化試験で評価
COMPLEMENT 1試験は、クロラムブシルへのオファツムマブ追加の有用性を検証する無作為化第III相試験(GlaxoSmithKline社などの助成による)。対象は、未治療の活動性のCLLで、高齢や併存疾患を理由にフルダラビンベースのレジメンが不適応と判定された患者であった。年齢制限は設けなかった。
被験者は、クロラムブシルを経口投与する群またはクロラムブシルにオファツムマブの静脈内投与を併用する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。
2008年12月22日~2011年5月26日までに、16ヵ国109施設に447例が登録され、オファツムマブ併用群に221例、クロラムブシル単独群には226例が割り付けられた。
PFSが9ヵ月以上延長、若年患者と同等
全体の年齢中央値は69(35~92)歳で、65歳以上が69%、70歳以上が49%、75歳以上は27%含まれ、63%が男性であった。また、65歳以上または併存疾患が2つ以上、クレアチニンクリアランスが70mL/分未満の患者が87%を占めた。
PFS中央値は、併用群が22.4ヵ月であり、単独群の13.1ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.45~0.72、p<0.0001)。ほとんどのサブグループで、併用群のほうがPFS中央値が長かった。
また、65歳未満のPFS中央値のHRは0.54(95%CI:0.34~0.85)であるのに対し、65歳以上は0.57(95%CI:0.43~0.76)、75歳以上は0.56(95%CI:0.35~0.89)であり、高齢患者でも若年患者と同等のPFSが達成された。
寛解率は併用群が82%、単独群は69%(オッズ比[OR]:2.16、95%CI:1.36~3.42、p=0.001)、完全寛解率はそれぞれ14%、1%であり、いずれも年齢、性別、Stage、予後因子にかかわらず併用群で良好であった。
一方、フォローアップ期間中央値28.9ヵ月の時点で、両群ともに全生存期間(OS)中央値には未到達で、有意な差は認めなかった(HR:0.91、95%CI:0.57~1.43、p=0.666)。2年OSは併用群が89%、単独群は87%、3年OSはそれぞれ85%、83%だった。
Grade 3以上の有害事象の頻度は、併用群が50%、単独群は43%であり、好中球減少(26 vs. 14%)の頻度が最も高く、感染症(9 vs. 12%)は両群で同等であった。また、併用群でGrade 3以上の注射関連有害事象が10%に発現した。治療期間中に10例が死亡し(両群5例ずつ)、このうち5例(併用群3例、単独群2例)が治療関連死と考えられた。
著者は、「これらの知見に加え、最近のオビヌツズマブやリツキシマブとクロラムブシルの併用に関するデータを考慮すると、抗CD20抗体薬とクロラムブシルによる免疫化学療法は、未治療の高齢CLL患者の重要な治療選択肢と考えられる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)