麻疹予防ワクチンの接種について、吸入タイプのエアロゾルワクチン接種は、従来タイプの皮下注ワクチン接種と比べて、免疫原性は認められたが、事前規定マージンに基づき評価した血清陽性率については劣性であったことが、WHOのNicola Low氏らによる非盲検無作為化非劣性試験の結果、示された。エアロゾル麻疹ワクチンはメキシコで開発され、1980年代以降400万人以上の子供たちに接種されている。臨床的な訓練を要さず注射関連の感染症の懸念もないことから、医療資源の乏しい発展途上国での使用拡大が期待されている。しかし、これまで有効性に関して相反するデータが示されてきたという。NEJM誌2015年4月16日号掲載の報告より。
2,004例対象に、接種後91日時点のエアロゾルワクチンの非劣性を評価
検討はインドで、麻疹ワクチンの初回接種が適格な生後9.0~11.9ヵ月児を集めて行われた。2009年12月20日~2010年4月5日に、ワクチン接種をエアロゾル吸入で行う群と皮下注射で行う群に無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、ワクチン接種後91日時点の、抗麻疹抗体の血清陽性率および有害事象とした。非劣性のマージンは5ポイントとした。
合計2,004例が、エアロゾルワクチン群(1,001例)と皮下注ワクチン群(1,003例)に無作為に割り付けられた。接種を受け91日時点のフォローアップを受けたのは1,956例(各群775例、785例)であった。しかし、そのうち331例(17%)のデータは、検体輸送時の解凍によりアウトカムデータを得ることができなかった。
per-protocol集団解析は、2,004例中の1,560例(77.8%)について行われた。
血清陽性率85%超だが非劣性マージン未達成
結果、91日時点の血清陽性児は、エアロゾルワクチン群662/775例(85.4%、95%信頼区間[CI]:82.5~88.0%)、皮下注ワクチン群743/785例(94.6%、同:92.7~96.1%)で、エアロゾルワクチン群のほうが血清陽性率は低く、両群差は9.2ポイント(95%CI:-12.2~-6.3ポイント)であった。
同様の所見は、全解析(エアロゾルワクチン群673/788例[85.4%]、皮下注ワクチン群754/796例[94.7%]、差:-9.3ポイント、95%CI:-12.3~-6.4ポイント)や、欠測データの多重代入後においても認められた。
麻疹ワクチン接種による重大有害事象は報告されなかった。また、有害事象は両群で同程度の報告であった。