リチウムの腎臓・内分泌系の有害作用/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/06/01

 

 リチウムは気分障害の治療に広く用いられ、優れた有効性が示されているが、腎臓や内分泌系への有害作用の特性はよくわかっていないという。英国・John Radcliffe病院のBrian Shine氏らは、今回、リチウムは腎機能を低下させ、甲状腺機能低下症や高カルシウム血症を引き起こすことを報告した。Lancet誌オンライン版2015年5月21日号掲載の報告より。

腎臓、甲状腺への有害作用を後ろ向きに検討
 研究グループは、オックスフォード大学病院NHSトラストに集積されたデータをレトロスペクティブに解析した。対象は、1982年10月1日~2014年3月31日に、年齢18歳以上で、血清クレアチニン、甲状腺刺激ホルモン、カルシウム、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、リチウムを2回以上測定された患者であった。リチウムの投与を受けていない患者を対照とした。

 以下の5つの有害作用の評価を行った。Stage 3の慢性腎臓病(推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)、甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン>5.5mU/L)、甲状腺機能亢進症(同<0.2mU/L)、総血清カルシウム濃度および補正血清カルシウム濃度の異常高値(>2.6mmol/L[≒46.8mg/dL])。

 全体で、4,678例(2回以上の投与は2,795例[60%])のリチウム投与例と68万9,228例の対照のデータが得られた。リチウムの投与回数は2~162回であり、初回から最後のリチウム投与までの期間中央値は3.0年(四分位範囲:0.7~8.7年、最長28年)であった。

60歳未満の女性でリスク大、治療早期に発現
 年齢、性別、糖尿病で補正すると、血清リチウム濃度は、Stage 3の慢性腎臓病(ハザード比[HR]:1.93、95%信頼区間[CI]:1.76~2.12、p<0.0001)、甲状腺機能低下症(2.31、2.05~2.60、p<0.0001)、総血清カルシウム濃度の上昇(1.43、1.21~1.69、p<0.0001)と有意な関連が認められた。

 一方、血清リチウム濃度は、甲状腺機能亢進症(HR:1.22、95%CI:0.96~1.55、p=0.1010)および補正血清カルシウム濃度の上昇(1.08、0.88~1.34、p=0.4602)とは関連がなかった。

 女性は男性に比べリチウムによる腎臓や甲状腺の障害のリスクが高かった。また、60歳未満の女性は、60歳以上の女性よりも高リスクであった。

 初回から最後のリチウム投与の期間が中央値より長い患者は、5つの有害作用のリスクがいずれも有意に低く、これはリチウムによる有害作用はいずれも治療早期に発現することを示す。また、5つの有害作用のリスクは、いずれも血清リチウム濃度が中央値よりも高値の患者で高かった。

 糖尿病の有無で、リチウムによる有害作用のリスクに差はみられなかった。

 著者は、「リチウムは、双極性障害患者の自殺リスクを低減するなど、現在も標準的な気分安定薬であることから、ベースライン時に腎臓および甲状腺、副甲状腺の機能の評価を行い、定期的なモニタリングを長期に継続する必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)