病期III・IVの卵巣がんに対して、化学療法を先行して後に手術を行う場合でも、手術を先行して後に化学療法を行う場合と比べてアウトカムは非劣性であることが示された。英国・バーミンガム大学のSean Kehoe氏らが、550例を対象に行った第III相の非盲検非劣性無作為化試験「CHORUS」の結果、報告した。著者は「今回の試験集団において進行卵巣がんについて、化学療法を手術よりも先行して行うことは標準療法として容認できるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。
87ヵ所の医療機関で550例を対象に試験
研究グループは、2004年3月1日~2010年8月30日にかけて、英国とニュージーランド87ヵ所の医療機関で、病期IIIまたはIVと疑われる卵巣がんの患者552例を対象に試験を行い、化学療法先行の手術先行に対する非劣性を検証した。
被験者のうち条件に合った550例を無作為化し、手術先行群(276例)には最初に手術をした後、化学療法を6サイクル実施した。一方の化学療法先行群(274例)には、最初に化学療法を3サイクル行った後、手術を行い、その後に化学療法を3サイクル実施した。各3週間サイクルの化学療法レジメンは、カルボプラチンAUC5/AUC6+パクリタキセル175mg/m
2、カルボプラチンAUC5/AUC6+その他の薬剤、またはカルボプラチンAUC5/AUC6単剤療法のいずれかだった。
主要評価項目は、全生存期間だった。非劣性は、ハザード比(HR)の90%信頼区間[CI]の上限値が1.18未満の場合とした。
化学療法先行群の手術先行群に対する死亡ハザード比は0.87
その結果、2014年5月末時点で、死亡は451例で、うち手術先行群は231例、化学療法先行群は220例だった。生存期間中央値は、手術先行群が22.6ヵ月、化学療法先行群が24.1ヵ月だった。
化学療法先行群の手術先行群に対する死亡に関するHRは、0.87(90%片側信頼区間の上限値:0.98)と、化学療法先行群が良好で、非劣性が示された。
なお、術後28日間のグレード3または4の有害イベント(手術先行群は60/252例[24%] vs. 化学療法先行群30/209例[14%]、p=0.0007)および死亡(14例[6%] vs. 1例[1%未満]、p=0.001)の発生は、手術先行群のほうがいずれも有意に多かった。最も多かったグレード3または4の有害イベントは出血で、手術先行群が8例(3%)、化学療法先行群が14例(6%)だった。
グレード3または4の化学療法関連毒性作用の発現頻度は、手術先行群110/225例(49%)、化学療法先行群が102/253例(40%)で有意差はなかった(p=0.0654)。その大半が好中球減少症(各群頻度は20%、16%)であった。なお、致死的な毒性作用(好中球減少症に伴う敗血症)が1例、化学療法先行群で発生した。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)