中高年の膝の痛みや変形性膝関節症に対する膝関節鏡視下手術について、痛みの改善効果はわずかであり、機能性に対する効果は認められないとの見解を、南デンマーク大学のJ. B. Thorlund氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。膝関節鏡視下手術は、持続的な膝の痛みを有する中高年に対して実施される頻度が高く、かつ増大している。その付加的効果を示す無作為化試験はわずかに1件だが、多くの専門医がその手術介入の効果を確信しているという。BMJ誌オンライン版2015年6月16日号掲載の報告より。
2000年以降発表論文をレビュー
研究グループは、Medline、Embase、CINAHL、コクランの臨床試験中央レジストリCENTRALなどを基に、2014年8月までに発表された、膝の痛みや変形性膝関節症を有する中高年患者への膝関節鏡視下手術に関する試験について、システマティックレビューとメタ解析を実施し、有効性と有害性を分析した。有害性についての論文は2000年以降発表分のみとした。
主要評価項目は、痛みと機能性だった。
術後の痛み改善効果はわずかで、1~2年と限定的
結果、該当する9件の無作為化比較試験が見つかった。
各試験の術後3~24ヵ月の主要エンドポイントを集計した主要解析の結果、膝関節鏡を含む手術介入を行った群の痛みの改善効果について、対照群との比較で示された差はわずかであった(効果量:0.14、95%信頼区間[CI]:0.03~0.26)。この差は、0~100mmの視覚的アナログスケール(VAS)で2.4mmに相当するものだった。
フォローアップ期間全体を通した分析では、膝関節鏡を含む介入の痛み改善効果は、術後3、6ヵ月時点ではVASで3~5mmとわずかで、その後24ヵ月時点ではベネフィットは認められなかった。一方、機能性については有意な効果が認められなかった(効果量:0.09、95%CI:-0.05~0.24)。
有害性については、9試験ともすべてで報告されており、具体的に、症候性深部静脈血栓症(4.13/1,000件)、肺塞栓症、感染症、死亡などだった。
結果を踏まえて著者は、「変形性膝関節症への関節鏡診断・治療から得られるベネフィットはわずかで、効果は術後1~2年と限定的である。一方で、膝関節鏡視下手術と有害性の関連が認められた」とまとめ、「これらの所見は、膝の痛みを有する中高年に対して、変形性膝関節症の症状の有無を問わず、膝関節鏡を用いた診療行為は支持されないことを示すものであった」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)