初回特発性深部静脈血栓症(DVT)を発症した人のうち、原発不明がんの罹患率は4%未満と低率で、血栓症発症時に腹部・骨盤部CT検査を含めたスクリーニングを行っても、がん検出率は向上しないことが明らかになった。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らが多施設共同非盲検無作為化比較試験の結果、報告した。静脈血栓症は、最も初期のがん徴候である可能性が示唆されている。一方、原発不明がんのスクリーニングについてはばらつきが大きいのが現状だった。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。
腹部・骨盤部CT検査を加えたスクリーニングを実施し結果を比較
Carrier氏らは、カナダの医療機関を通じて、初回特発性深部静脈血栓症を発症した患者854例を対象に試験を行った。
被験者を2群に分け、一方には血液検査、胸部X線検査、乳房・子宮頸部・前立腺がんのスクリーニングから成る限定的原発不明がんスクリーニングを、もう一群にはそれに腹部・骨盤部CT検査を加えたスクリーニングを行った。
主要評価項目は、スクリーニングにより見逃したがんで、追跡期間1年以内に見つかり診断を受けたものとした。
スクリーニング見逃し率、がん診断までの期間など、両群で同等
その結果、被験者のうち1年以内に原発不明がんが見つかったのは、3.9%(33例)だった。そのうち限定的スクリーニング群は3.2%(431例中14例)で、CTスクリーニング群は4.5%(423例中19例)だった(p=0.28)。
限定的スクリーニングによってがんが検出できなかった人は4例(29%)、限定的スクリーニング+CT検査でがんが検出できなかった人は5例(26%)で、両群に有意差はなかった(p=1.0)。
また、がん診断までの期間平均値についても、限定的スクリーニング群が4.2ヵ月、CTスクリーニング群が4.0ヵ月と、両群で同等だった(p=0.88)。がん死亡率についても、それぞれ1.4%、0.9%と同等だった(p=0.75)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)