骨髄性プロトポルフィリン症はまれな遺伝性疾患で、急性の光毒性を伴う重度の光線過敏症を呈し、きわめて強い疼痛がみられQOLが著明に低下する。オランダ・エラスムス医療センターのJanneke G Langendonk氏らは、afamelanotideが本症の症状を軽減し、忍容性も良好であることを確認し報告した。本症の光線過敏症は、プロトポルフィリンをヘムへ変換する合成酵素であるフェロケラターゼの活性低下に起因する。afamelanotideはヒトαメラノサイト刺激ホルモンのアナログで、メラノサイトなどの皮膚細胞のメラノコルチン1受容体に結合するトリデカペプチドであり、紫外線放射によってメラニン産生が刺激された際に生じる紫外線による細胞障害を起こすことなく、表皮のユーメラニン産生を増加させるという。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告より。
欧米の2件の無作為化試験で疼痛なしの直射日光曝露時間を評価
研究グループは、骨髄性プロトポルフィリン症に対するafamelanotideの安全性と有効性を評価する2件(欧州、米国)の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(Clinuvel Pharmaceuticals社などの助成による)。患者の適格基準は2つの試験で同じとし、対象は年齢18歳以上、生化学的検査で本症が確定された患者であった。
被験者は、afamelanotide 16mgまたはプラセボを60日ごとに皮下に埋め込む治療を施行する群に無作為に割り付けられた。欧州の試験では合計5回(0、60、120、180、240日)、米国の試験では3回(0、60、120日)の皮下埋め込み治療が行われた。
欧州試験は270日、米国試験は180日の試験期間を通じて、日光曝露のタイプとその期間、光毒性反応の回数と重症度、有害事象が記録された。QOL評価は本症での妥当性が確認された質問票を用いて行われた。疼痛と光毒性反応の評価にはリッカート・スケールが用いられた。有効性の主要エンドポイントは、疼痛を伴わない直射日光への曝露時間とした。
2つの試験の主要な結果はほぼ一致
167例(欧州試験:74例、米国試験:93例)が解析の対象となった(afamelanotide群:86例、プラセボ群:81例)。欧州試験のafamelanotide群が38例(平均年齢38.3±13.0歳、試験完遂率89%)、プラセボ群は36例(38.6±11.6歳、94%)、米国試験はそれぞれ48例(40.4±12歳、96%)、45例(39.1±16.2歳、93%)だった。
米国試験では、6ヵ月後の疼痛を伴わない曝露時間中央値は、afamelanotide群が69.4時間と、プラセボ群の40.8時間に比べ有意に長かった(p=0.04)。欧州試験でも、9ヵ月後の疼痛を伴わない曝露時間中央値が、afamelanotide群は6.0時間であり、プラセボ群の0.8時間よりも長かった(p=0.005)。
光毒性反応の回数は、米国試験の6ヵ月後の評価ではafamelanotide群が46回、プラセボ群は43回であり有意な差は認めなかった(p=0.60)が、欧州試験の9ヵ月後の評価ではそれぞれ77回、146回であり、afamelanotide群で有意に少なかった(p=0.04)。
QOL評価は各投与日の投与前および試験期間最終日に行われた(米国試験は360日にも評価した)。両試験とも、全般に試験期間を通じて経時的にQOLが改善する傾向がみられ、欧州試験では120日(p=0.005)、180日(p=0.03)、240日(p=0.01)にafamelanotide群で有意に良好であったが、270日には240日よりも低下し、両群間の有意差は消失した(p=0.06)。
米国試験では、60日(p<0.001)、120日(p<0.001)、180日(p=0.02)にafamelanotide群でQOLが有意に改善したが、360日(最終投与後240日)にはむしろafamelanotide群で低い傾向がみられた。
有害事象は全般に軽度~中等度で、最も頻度の高いものは両群とも頭痛、悪心、鼻咽頭炎、背痛であった。重篤な有害事象がafamelanotide群の4例、プラセボ群の2例に認められたが、いずれも治療には関連しないと判定された。死亡例はなかった。
著者は、「欧州の5回投与9ヵ月試験と米国の3回投与6ヵ月試験で主な結果はほぼ一致していた。afamelanotideの副作用と有害事象プロファイルは忍容可能であり、疼痛を伴わない日光曝露時間が延長し、QOLが改善した」としている。
(菅野守:医学ライター)