早期乳がんの術後に行う放射線治療において、全乳房照射または胸壁照射に、リンパ節領域照射(胸骨傍・内側鎖骨上リンパ節照射)を追加しても、全生存への効果は僅差にみられる程度であることが示された。オランダ・ラドバウド大学医療センターのPhilip M Poortmans氏らが、無作為化試験の結果、報告した。これまで、リンパ節領域照射を追加した場合の生存への効果については不明であった。なお、無病生存率と遠隔無病生存率は改善し、乳がん死亡率は有意な低下がみられたという。NEJM誌2015年7月23日号掲載の報告。
4,004例を対象に無作為化試験
検討は、腋窩リンパ節転移の有無を問わず原発巣が乳輪部または乳房内側に位置する女性、または原発巣が乳房外側に位置し腋窩リンパ節転移を認める女性を対象に行われた。
被験者を、全乳房照射または胸壁照射に加えてリンパ節照射を受ける(リンパ節照射)群と、全乳房照射または胸壁照射のみを受ける(対照)群に無作為に割り付け追跡評価した。
主要エンドポイントは全生存率とし、副次エンドポイントは、無病生存率、遠隔無病生存率、乳がん死亡などだった。
1996~2004年に13ヵ国46施設で合計4,004例の患者が登録され、2群に無作為に割り付けられた。両群の患者の特性は類似しており、年齢中央値は54歳、95.8%の患者の原発巣が5cm以下で、87.5%が腋窩リンパ節転移なしもしくは1~3個であった。また、患者の大半(76.1%)が乳房温存手術を受け、術後に放射線治療を受けた。そのうち85.1%の患者では原発巣へのブースト照射が行われた。
術後、胸壁照射を受けたのは、両群患者の73.4%であった。リンパ節転移陽性患者のほぼ全例(99.0%)とリンパ節転移陰性例では66.3%が、全身的補助療法を受けた。
リンパ節領域照射群の全生存率HRは0.87、生存改善について統計的確認できず
追跡期間中央値10.9年で、811例の死亡が報告された。
10年時点の全生存率は、リンパ節照射群82.3%、対照群80.7%で、全生存率の改善傾向はみられたが、補正前log-rank検定による確認はできなかった(リンパ節照射群の対照群に対する死亡ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.76~1.00、p=0.06)。
無病生存率は、それぞれ72.1%、69.1%であった(病勢進行または死亡HR:0.89、95%CI:0.80~1.00、p=0.04)、遠隔無病生存率は78.0% vs.75.0%(HR:0.86、95%CI:0.76~0.98、p=0.02)、乳がん死亡率は12.5% vs.14.4%であった(同:0.82、0.70~0.97、p=0.02)。
リンパ節領域照射による急性副作用は、わずかであった。