プライマリケアで容易に適用できる肺塞栓症の診断予測モデルは5つあり、的中率はいずれも類似しているが、偽陰性率が低いという点でWells基準のモデルパフォーマンスが最良であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJanneke M T Hendriksen氏らが、システマティックレビューとプライマリケア設定での妥当性確認調査を行い明らかにした。プライマリケアでは、Wellsスコア4以下でDダイマー検査陰性であれば約10人に4人の割合で、安全に肺塞栓症を除外できる。ほかにも肺塞栓症の診断予測モデルは開発されているが、2次医療で検証されたもので、プライマリケアでの臨床能は不明であった。BMJ誌オンライン版2015年9月8日号掲載の報告より。
レビューで全モデルを洗い出し、プライマリケアデータセットで検証
研究グループはシステマティックレビューにより、すべてのモデルの診断能を特定し、それらモデルをプライマリケア患者に当てはめて検証作業を行った。プライマリケア設定には、オランダの一般医300人の協力を得て、急性肺塞栓症が疑われる598例のデータがセットされた。
検討では、レビューで特定したすべてのモデルの鑑別能をC統計値で算出し比較。Dダイマー検査値を含む事前規定モデルのカットオフ値で、肺塞栓症の確率が高い群と低い群に層別化した患者群に各モデルを当てはめ、感度、特異度、的中率(全体に占める低確率予測群の肺塞栓症患者の割合)、偽陰性率(低確率予測群に占める肺塞栓症例の割合)を比較した。
的中率は同等だが、偽陰性率の低さでWells基準が最良
発表されていた肺塞栓症予測モデルは10個確認された。
このうち5個(原型Wells、修正Wells、簡易Wells、改訂Geneva、簡易改訂Geneva)について、プライマリケア設定で検証することができた。
鑑別能はすべてのモデルで類似していた(C統計値の範囲:0.75~0.80)。感度は、簡易改訂Genevaの88%から、簡易Wellsの96%の範囲にわたり、特異度は、改訂Genevaの48%から簡易改訂Genevaの53%にわたっていた。
すべてのモデルの的中率は43%~48%の範囲内にあった。
一方、差がみられたのは偽陰性率で、とくに、簡易Wells(1.2%、95%信頼区間[CI]:0.2~3.3%)と簡易改訂Geneva(3.1%、1.4~5.9%)の差が大きかった(絶対差:-1.98%、95%CI:-0.33~-0.74%)。
なおいずれの診断予測モデルにおいても、3例の患者が誤って低確率群に分類され、2次医療に紹介後において初めて肺塞栓症と診断された。