乳がん診断時の腫瘍ステージ、生存に有意に影響/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/10/19

 

 オランダ・エラスムス大学医療センターのSepideh Saadatmand氏らは、現時点での、乳がん検出時の腫瘍病期の生存への影響を調べた。17万強を対象とする前向き住民ベース研究の結果、現状で効果があるとされる全身療法で有意に生存に影響することを報告し、「早期での診断が不可欠である」と指摘した。BMJ誌オンライン版2015年10月6日号掲載の報告。

オランダ乳がん女性17万3,797例について評価
 検討は、乳がん診断時の病期、腫瘍の生物学、治療の生存への影響を、現状で良好とされる術前/術後補助全身療法下で評価することを目的とした。被験者は、オランダ全国がんレジストリから、1999~2012年に原発性乳がんと診断された女性17万3,797例であった。乳がん診断のバイアスを考慮し、2コホート(1999~2005年8万228例、2006~12年9万3,569例)に区分し、両群の相対生存率を比較した。全死亡への従来予後因子の影響をCox回帰分析法にて各コホートについて分析した。

相対生存率は改善も、腫瘍径やリンパ節転移進行度に伴い死亡率上昇は変わらず
 2006~12年コホートは1999~2005年コホートと比較して、腫瘍径が有意に小さく(T1以下65%[6万570例] vs.60%[4万8,031例]、p<0.001)、リンパ節転移のない患者が有意に多かった(N0 68%[6万3,544例] vs.65%[5万2,238例]、p<0.001)。一方で化学療法、ホルモン療法、分子標的療法を受けた人が有意に多かった(術前/術後補助全身療法60%[5万6,402例] vs.53%[4万2,185例]、p<0.001)。追跡期間中央値は、1999~2005年コホート9.8年、2006~12年コホート3.9年であった。

 5年相対生存率は、2006~12年コホートが96%(1999~2005年コホート91%)で、すべての原発巣および、リンパ節の病期において、2006~12年コホートは1999~2005年コホートと比べて改善していた。腫瘍径1cm以下は100%であった。

 年齢、腫瘍型で調整した多変量解析の結果、全死亡率は、手術(とくに乳房温存手術)、放射線療法、全身療法により低下することが示された。

 一方で死亡率は、両群ともに腫瘍径の増加とともに上昇がみられた(2006~12年コホートT1c vs.T1aのハザード比[HR]:1.54、95%信頼区間[CI]:1.33~1.78/1999~2005年コホート同:1.40、1.27~1.53、両コホートともp<0.001)。しかし、1cm以下の浸潤性乳がんについては、有意差はみられなかった(2006~12年コホートT1b vs.T1aのHR:1.04、95%CI:0.88~1.22、p=0.677;1999~2005年コホート同:1.09、0.99~1.20、p=0.098)。リンパ節転移の進行度とは独立した関連がみられた(2006~12年コホートN1 vs.N0のHR:1.25、95%CI:1.17~1.32;1999~2005年コホート同:1.35、1.30~1.39、両コホートともp<0.001)。

専門家はこう見る

コメンテーター : 矢形 寛( やがた ひろし ) 氏

埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科 教授