子宮鏡下避妊法(hysteroscopic sterilization)は腹腔鏡下避妊(laparoscopic sterilization)法と比べて、望まない妊娠リスクは同程度だが、再手術リスクが10倍以上高いことが、米国・コーネル大学医学部のJialin Mao氏らによる観察コホート研究の結果、報告された。数十年間、女性の永久避妊法は腹腔鏡下両側卵管結紮術がプライマリな方法として行われてきたが、低侵襲な方法として医療器具Essureを用いて行う子宮鏡下避妊法が開発された。欧州では2001年に、米国では2002年に承認されているが、米国FDAには承認以来、望まない妊娠や子宮外妊娠、再手術など数千件の有害事象が報告され、2014年には訴訟も起きているという。しかし、これまでEssure子宮鏡下避妊法の安全性、有効性に関して、卵管結紮術と比較した報告はほとんどなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。
2005~13年ニューヨーク州住民ベースでEssure子宮鏡下法 vs.腹腔鏡下法
検討は、Essure子宮鏡下避妊法の安全性と有効性を、大規模包括的な州コホートで腹腔鏡下避妊法と比較した住民ベースコホート研究であった。ニューヨーク州の日帰り手術施設で、2005~13年に子宮鏡下法および腹腔鏡下法を含む避妊法を複数回受けている女性を対象とした。
主要評価項目は、術後30日以内の安全性イベント、1年以内の望まない妊娠と再手術とした。患者特性およびその他交絡因子を補正後、病院クラスター混合モデルを用いて、30日アウトカムと1年アウトカムを比較した。再手術までの期間は、frailty時間事象分析法を用いて評価した。
望まない妊娠リスクオッズ比0.84、再手術リスクオッズ比10.16
対象期間中、子宮鏡下法を受けた患者は8,048例、腹腔鏡下法を受けた患者は4万4,278例が特定された。同期間中、子宮鏡下法は45例(2005年)から1,231例(2013年)へと有意に増大していた(p<0.01)。一方、腹腔鏡下法は同7,852例から3,517例に減少していた。子宮鏡下法を受けた患者は腹腔鏡下法を受けた患者と比べて、高年齢で(40歳以上25.2% vs.20.5%、p<0.01)、骨盤内炎症性疾患歴(10.3% vs.7.2%、p<0.01)、重大腹部手術歴(9.4% vs.7.9%、p<0.01)、帝王切開歴(23.2% vs.15.4%、p<0.01)を有する傾向がみられた。
術後1年時点で、子宮鏡下法は腹腔鏡下法と比較して、望まない妊娠リスクは高くなかったが(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.63~1.12)、再手術リスクについて大幅な増大が認められた(OR:10.16、95%CI:7.47~13.81)。
結果を踏まえて著者は、「両避妊法のベネフィットとリスクについて患者と十分に話し合い、患者が情報に基づく意思決定ができるようにしなければならい」と提言している。
(武藤まき:医療ライター)