2型糖尿病患者は一般集団よりも全死因死亡率が15%、心血管死亡率は14%高く、55歳未満では血糖値が目標値内であっても死亡リスクが約2倍に上昇するなど、超過リスクはきわめて多様であることが、スウェーデン・イエーテボリ大学のMauro Tancredi氏らの調査で示された。2型糖尿病患者の最も頻度の高い死因は心筋梗塞であり、そのリスクは脂質低下薬や降圧薬、良好な血糖コントロールにより低減するが、それでも一般集団に比べ死亡の超過リスクが残存する。同氏らは最近、1型糖尿病患者において、HbA1c値が目標値(≦6.9%)でも死亡リスクが2倍に達することを報告していた。NEJM誌2015年10月29日号掲載の報告より。
約255万例で死亡の超過リスクを評価
研究グループは、血糖コントロールや腎合併症の病態が異なる2型糖尿病患者において、全死因死亡および心血管系の原因による死亡の超過リスクを評価するレジストリベースの検討を行った(スウェーデン政府などの助成による)。
対象は、1998年1月1日以降にスウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者であった。1人の患者に対し、一般集団から5人の対照を無作為に選び、年齢、性別、居住県を適合。全参加者は、スウェーデン原因別死亡登録により2011年12月31日まで追跡された。
255万2,852例(糖尿病群:43万5,369例、対照群:211万7,483例)が解析の対象となった。平均年齢は糖尿病群が65.8±12.6歳、対照群は65.5±12.5歳、女性はそれぞれ44.5%、45.1%であった。糖尿病群でスウェーデン生まれ(82.9 vs.87.6%)、大学卒以上(15.7 vs.23.4%)が少なかった。
糖尿病群の平均HbA1c値は7.1%、罹患期間は5.7年であった。平均フォローアップ期間は、糖尿病群が4.6年、対照群は4.8年だった。
75歳以上の血糖コントロール良好例ではリスクが低下
全体の死亡率は糖尿病群が17.7%(7万7,117/43万5,369例)であり、対照群の14.5%(30万6,097/211万7,483例)に比べ有意に高かった(補正ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.14~1.16)。
心血管死亡率も、糖尿病群が7.9%と、対照群の6.1%に比し有意に高かった(補正HR:1.14、95%CI:1.13~1.15)。
全死因死亡および心血管死の超過リスクは、年齢がより低いほど、血糖コントロールが不良なほど、腎合併症が重度であるほど増加した。
対照群と比較して、血糖コントロールが良好な糖尿病患者(HbA1c値≦6.9%)の全死因死亡HRは、55歳未満の患者では1.92(95%CI:1.75~2.11)と約2倍高かったが、75歳以上の患者では0.95(95%CI:0.94~0.96)と低かった。
また、正常アルブミン尿の患者では、対照群と比較した死亡のHRは、HbA1c値≦6.9%・55歳未満の患者が1.60(95%CI:1.40~1.82)と高リスクであったのに対し、75歳以上の患者は0.76(95%CI:0.75~0.78)と低リスクであり、65~74歳の患者もリスクが低かった(HR:0.87、95%CI:0.84~0.91)。
著者は、「一般集団と比較した2型糖尿病患者の死亡率はきわめて多様であった。大規模な患者群では著明な超過リスクが認められたが、年齢層や血糖コントロール、腎合併症の病態の違いによっては、死亡リスクが低下する場合もあった」としている。
(菅野守:医学ライター)