急性虚血性脳卒中に対し、血栓除去術による血管内治療は、tPA療法による標準治療と比較して機能的アウトカムを改善し、血管造影上の血行再建率は高率だが90日時点の症候性頭蓋内出血または全死因死亡に有意差はなかった。カナダ・トロント大学のJetan H. Badhiwala氏らがメタ解析の結果、報告した。急性虚血性脳卒中に対する血管内治療は血行再建を改善する。しかし血管内治療について検討した試験での機能的アウトカムはばらつきがみられ、サブグループに対する治療効果についてはさらなる定義付けが必要とされていた。JAMA誌2015年11月3日号掲載の報告より。
メタ解析で90日時点の修正Rankinスケールスコアでみた改善を評価
研究グループは、2015年8月時点で、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Google Scholar、Cochrane Libraryで言語を問わず系統的検索を行い、急性虚血性脳卒中患者における血栓除去術による血管内治療と臨床的アウトカムの関連を調べた。検索では、同治療とtPA使用を含む標準治療を比較した無作為化試験を適格とした。
独立レビュワーが試験の質を評価しデータを抽出。研究グループが、すべてのアウトカムについてランダム効果メタ解析法を用いてオッズ比(OR)を95%信頼区間(CI)とともに算出した。またサブグループ解析、感度解析を行い、特定のイメージング、患者、治療または試験特性が、機能的アウトカムと関連しているかを調べた。すべてのアウトカムのエビデンスの強度はGRADE法を用いて調べた。
主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコアでみた改善で、各試験のmRSスコアの比例ORを順位ロジスティック回帰分析法で算出して評価した。また、副次アウトカムとして、機能的独立(mRSスコア0~2)、24時間時点での血管造影血行再建術、90日間の症候性頭蓋内出血の発生、90日時点の全死因死亡も評価した。
血栓除去術群が有意に改善、ORは1.56
解析には、8試験2,423例のデータが包含された。平均年齢(SD)は67.4(14.4)歳、女性が1,131例(46.7%)で、1,313例が血栓除去術、1,110例がtPA治療を受けていた。
メタ解析の結果、血管内治療はmRSスコア全体で有意な治療ベネフィットと関連していた(OR:1.56、95%CI:1.14~2.13、p=0.005)。
90日時点の機能的独立(mRSスコア0~2)は、血管内治療群では557/1,293例(44.6%、95%CI:36.6~52.8%)、標準治療群は351/1,094例(31.8%、24.6~40.0%)でみられた(リスク差:12%、95%CI:3.8~20.3、OR:1.71、95%CI:1.18~2.49、p=0.005)。
標準治療と比較して血管内治療は、24時間時点の血管造影上の血行再建が有意に高率であった(75.8% vs.34.1%、OR:6.49、95%CI:4.79~8.79、p<0.001)。一方で、90日間の症候性頭蓋内出血の発生について、有意差はみられなかった[70例(5.7%) vs.53例(5.1%)、OR:1.12、95%CI、0.77~1.63、p=0.56]。90日時点の全死因死亡についても有意差はみられなかった[218例(15.8%) vs.201例(17.8%)、OR:0.87、95%CI:0.68~1.12、p=0.27]。