モザンビークは世界でも最も貧しい国の一つである。人口約1,800万人のうち、7割は農村部に暮らしている。この国の精神科医はわずか10人に過ぎず、人々の精神的・神経学的健康状態に関する情報不足は、国の政策決定と医療資源への投資を妨げてきた。Vikram Patel氏らのグループはWHOの支援を受けたモザンビーク保健省とともに、都市部と農村部における発作性疾患、精神疾患、精神発達遅滞の出現率の評価を行った。LANCET誌9月22日号より。
都市部と農村部から計2,739世帯をランダムに抽出
調査対象はモザンビークの首都Maputo市から1,796世帯、同国でも最も貧困な地方の町Cuambaから943世帯の計2,739世帯がランダムに選ばれた。
調査は一定間隔ごとの世帯への訪問インタビュー形式で行われた。各々の世帯の情報提供のキーマンとなる人物から、症状に合致する障害のあると思われる世帯構成員を聞き出すことで有症者を同定し、障害の原因と行われた治療、現在の状態についても聞き取りが行われた。
農村部の精神疾患出現率は都市部の約3倍
生涯有病率は3つの精神障害すべてにおいて、都市部より地方の方がより高かった。成人の精神疾患出現率は農村部の4.4%に対し都市部では1.6%(標準化有病比2.79)、精神発達遅滞は1.9%対1.3%(同1.48)、発作性疾患は4.0%対1.6%(同2.00)だった。
3つの障害の中で、世帯情報提供者がその原因を超自然的な理由にあると考えているのは精神疾患がトップで、発作性疾患がそれに続いた。また、これら精神疾患を持つ構成員のいる世帯の約4分の3は“昔ながらの開業医”に相談しており、農村部に住むこれら障害のある者のほぼ半数は現在も健康状態に問題ありと判定できた。
Patel氏らはこうした実態を踏まえ、「精神障害に対する理解を向上させるための援助としては、農村部における精神保健資源への投資、そして、特にモザンビークの貧困な農村地帯においては“昔ながらの開業医”との協力が差し迫った課題である」と結論づけた。