心筋トロポニン陽性は独立した院内死亡の予測変数

提供元:ケアネット

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公開日:2008/05/28

 

心筋トロポニンは急性冠動脈症候群の診断と予後に関する情報を提供するが、急性非代償性心不全での役割はわかっていない。クリーブランド・クリニックのW. Frank Peacock IV氏らの研究グループは、急性非代償性心不全で入院した患者の中で、心筋トロポニン濃度が高い症例を分析し、有害事象との関連を説明するためレトロスペクティブ解析を行った。NEJM誌2008年5月15日号より。

急性非代償性心不全患者4240例を解析




研究グループは、2001年10月から2004年1月にかけて急性非代償性心不全で入院し、Acute Decompensated Heart Failure National Registry(ADHERE)に登録された患者を対象に分析を行った。登録の基準となるトロポニン濃度は入院時に得られた数値としたが、特にトロポニンTは腎不全患者でも血中濃度が高くなるため、血清クレアチニン濃度が2.0mg/dL未満(177μmol/L)の患者に限って登録した。

トロポニン検査陽性は、心筋トロポニンIレベルが1.0μg/L以上、心筋トロポニンTレベルは0.1μg/L以上と定義。急性非代償性心不全で入院した患者105,388例のうち、84,872例(80.5%)で測定が行われた。これらの症例のうち、67,924例がクレアチニン濃度2.0mg/dl未満だった。

心筋トロポニンIは61,379例、心筋トロポニンT は7,880例で測定され、両方のトロポニンが測定されたのは1,335例。これらのうち4,240例(6.2%)がトロポニン陽性と判定された。

心筋トロポニン陽性は院内死亡率が有意に高い




トロポニン陽性例はトロポニン陰性例と比べて、入院時の収縮期血圧および駆出率が低く、院内死亡率も高かった(8.0%対2.7%、P<0.001)。トロポニン陽性群の死亡における補正オッズ比は2.55(95%信頼区間 2.24~2.89、Wald検定によるP<0.001)であった。

これらの結果から研究グループは、急性非代償性心不全患者において心筋トロポニン陽性であることは、他の予測変数とは独立して、より高い院内死亡率との相関を示すと結論づけている。

(武藤まき:医療ライター)