再発または難治性多発性骨髄腫に対し、新規抗ヒトCD38モノクロナール抗体daratumumab単剤投与は、良好な安全性プロファイルを示し有効性も期待できることが、米国・エモリー大学のSagar Lonial氏らによる国際多施設共同第II相非盲検無作為化試験「SIRIUS」の結果、明らかとなった。著者は、「十分な奏効が得られ忍容性も良好であることから、daratumumabの16mg/kg投与は、病勢進行の再発・難治性多発性骨髄腫患者に対する治療選択肢となりうる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年1月6日号掲載の報告。
daratumumabの推奨用量は16mg/kg
試験は、カナダ、スペインおよび米国で行われた。対象は、18歳以上で、プロテアソーム阻害薬や免疫調整薬を含む3レジメン以上の前治療歴、もしくはプロテアソーム阻害薬および免疫調整薬の治療歴があり、かつ直近の治療中または治療終了後60日以内に病勢進行した多発性骨髄腫患者であった。
有効性の主要評価項目は全奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、臨床的有用率(最小奏効+OR)であった。
試験はパート1とパート2からなり、まずパート1の第1期として、対象患者34例をdaratumumab 8mg/kg静脈内投与群(18例)と、16mg/kg投与群(16例)にランダム化。前者は8mg/kgを4週ごとに、後者は16mg/kgを1週ごとに8週間、2週ごとに16週間、その後は4週ごとに投与した。この結果、8mg/kg投与群はORRが11.1%(95%信頼区間[CI]:1.4~34.7)と基準を満たさなかったため、第2期として16mg/kg投与群に25例を追加登録して再評価し、推奨用量を16mg/kgに決定した。その後、パート2として65例が登録された。
本試験は進行中で、今回はパート1の第2期およびパート2において16mg/kgが投与された計106例の解析結果が報告された。
前治療歴が多くても、16mg/kg投与でORRは29%、PFSは3.7ヵ月
16mg/kg投与群計106例の患者背景は、前治療歴中央値が5レジメン(範囲2~14)、自家造血幹細胞移植歴ありが85例(80%)、直近のプロテアソーム阻害薬および免疫調整薬に抵抗性101例(95%)、最終ラインの治療に抵抗性103例(97%)であった。
ORRは29.2%(31例)(95%CI:20.8~38.9%)で、3例(2.8%、95%CI:0.6~0.8)が厳格な完全奏効(sCR)、10例(9.4%、95%CI:4.6~16.7)が最良部分奏効(VGPR)、18例(17.0%、95%CI:10.4~25.5)が部分奏効であった。臨床的有用率は34%(95%CI:25.0~43.8)であった。また、奏効までの期間中央値は1ヵ月(範囲:0.9~5.6ヵ月)、奏効期間中央値は7.4ヵ月(95%CI:5.5~推定不能)、PFSは3.7ヵ月(95%CI:2.8~4.6)、1年生存率64.8%(95%CI:51.2~75.5)、OS中央値17.5ヵ月(95%CI:13.7~推定不能)であった。
前治療および年齢、腎機能などの患者背景に基づくサブグループ解析でも、有効性に大きな違いはみられなかった。
安全性については良好な忍容性が認められた。発現率が高かった有害事象は倦怠感(42例、40%)、貧血(35例、33%)で、薬剤関連有害事象による投与中止例はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)