高齢の症候性頸動脈狭窄症患者の手術治療について、これまでに頸動脈内膜剥離術(CEA)が頸動脈ステント留置術(CAS)よりもアウトカムが良好であることが示唆されていたが、詳細な年齢の影響を調べた結果、70~74歳群以降では明らかにCEAのアウトカムが優れることが示された。米国・アラバマ大学公衆衛生大学院のGeorge Howard氏らが、CAS vs.CEAを比較した4つの無作為化試験データをメタ解析。その際60~79歳の患者データについて5歳年齢単位とし、60歳未満、80歳以上を加えた各年齢群の脳卒中または死亡リスクを調べ、年齢とアウトカムとの関連を評価した。結果、高齢者における両手術間のアウトカムの差は、大半がCAS周術期脳卒中リスクの増大によるものであることが判明した。年齢とCEA周術期リスクとの関連はみられず、また両手術とも周術期以降のリスクと年齢の関連はみられなかったという。Lancet誌オンライン版2016年2月12日号掲載の報告。
4つのCAS vs.CEA無作為化試験被験者のデータを6年齢群で分類しメタ解析
研究グループは、Carotid Stenosis Trialists’ Collaboration(CSTC)が症候性頸動脈狭窄症の患者を集めて行った4つの無作為化試験の、参加患者の個別データを集めて分析した。分析に組み込んだのは、CAS vs.CEAの無作為化試験の被験者、かつ症候性の狭窄症を呈した患者データのみとした。
主要アウトカムは、周術期(無作為化~120日の間)における脳卒中または死亡リスク、および周術期以降(120日以降)における同側脳卒中の発生リスクで、年齢群(60歳未満、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75~79歳、80歳以上)ごとに評価。また、CAS群とCEA群の差についても評価した。分析はすべてintention-to-treatにて行われた。
CAS群で周術期リスクに有意な年齢の影響を認める
4試験で、CASまたはCEAに無作為に割り付けられた患者は4,754例であった。追跡期間中央値は2.7年で、イベント433例が発生した。このうち、周術期以降も追跡を受けたのは4,289例で、イベント発生は98例(2.3%)であった。
分析の結果、CAS群において、60歳未満群と比較した65~69歳群の脳卒中/死亡の周術期ハザード比(HR)は2.16(95%信頼区間[CI]:1.13~4.13)であり、70歳以上群のHRはおおよそ4.0で、年齢と周術期HRの関連が認められた(傾向のp<0.0001)。一方CEA群では、年齢群が上昇するにつれて周術期リスクが増大するとのエビデンスは認められなかった(傾向のp=0.34)。これらが影響してCAS vs.CEAの周術期HRは、65~69歳群では1.61(95%CI:0.90~2.88)、70~74歳群では2.09(同:1.32~3.32)であり、年齢との関連がみられた(傾向のp<0.0001)。
周術期以降の脳卒中リスクの評価では、両手術群とも年齢の影響は認められなかった(傾向のp:CAS群≧0.09、CEA群0.83))。CAS vs.CEAの周術期以降のHRにも年齢の影響はみられなかった(傾向のp=0.84)。