脳梗塞急性期には血栓除去術が有益/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/07

 

 患者特性などを問わず大半の脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者にベネフィットをもたらす脳血管内治療は、血栓除去術であることが明らかにされた。カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らHERMES共同研究グループが、5つの無作為化試験に参加した全被験者データをメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2016年2月18日号で発表した。著者は、「この結果は、脳主幹動脈梗塞による急性虚血性脳卒中患者へのタイムリーな治療を提供するケアシステム構築において大きな意味を持つだろう」と述べている。

5つの無作為化試験の患者データをメタ解析
 2015年現在までに、5つの無作為化試験で、脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中(以下、脳梗塞急性期)患者には、血栓除去術が標準的内科治療よりも有効であることが示されている。研究グループは、それら試験に参加した全被験者データを分析し、背景が異なる患者集団全体で治療の有効性が認められるか、メタ解析で調べた。

 対象となった試験は、2010年12月~14年12月に行われたMR CLEAN、ESCAPE、REVASCAT、SWIFT PRIME、EXTEND IA。これらの試験では、脳梗塞急性期患者を、発症後12時間以内に血栓除去術を行う群または標準的内科治療(対照)群に無作為に割り付けて、90日時点の障害重症度の軽減を修正Rankinスケール(mRS)で評価(主要アウトカム)する検討が行われていた。

 研究グループは、各試験データベースから直接、被験者データを集めて、プール集団で90日時点のmRS評価による障害軽減について評価した。また、その治療効果の不均一性について、事前に規定したサブグループ全体で検証した。

 試験間のばらつきは、混合効果モデルと着目したパラメータのランダム効果を用いて補足した。そのうえで、混合効果順序ロジスティック回帰モデルを用いて、全集団における主要アウトカムの共通オッズ比(cOR)を算出した(シフト解析)。また、年齢、性別、ベースライン脳卒中重症度(National Institutes of Health Stroke Scale score)、閉塞部位(内頸動脈 vs.中大脳動脈M1 vs.同M2)、rt-PA静注療法(実施 vs.未実施)、ベースラインのAlberta Stroke Program Early CTスコア、発症から無作為化までの時間で補正後のサブグループ評価も行った。

標準的内科治療と比較した90日時点の障害重症度軽減オッズ比は2.49
 解析には、1,287例の患者データが組み込まれた(血栓除去群634例、対照群653例)。

 血栓除去群は、対照群と比べて90日時点の障害重症度が有意に低かった(補正後cOR:2.49、95%信頼区間[CI]:1.76~3.53、p<0.0001)。NTTを試算すると、血栓除去術2.6例施行につき1例の患者で、mRS評価で1単位以上の障害重症度の軽減が認められた。

 主要エンドポイントのサブグループ解析では、事前規定のサブグループ全体で障害重症度軽減への治療効果の不均一性は認められなかった(交互作用p=0.43)。

 また、80歳以上の患者(cOR:3.68、95%CI:1.95~6.92)、発症から無作為化までの時間が300分超の患者(1.76、1.05~2.97)、rt-PA静注療法不適の患者(2.43、1.30~4.55)といった注目すべき階層群で、対照よりも血栓除去術の効果サイズが大きかった。

 90日時点の死亡率、硬膜下血腫および症候性頭蓋内出血リスクは、治療群間で差はみられなかった。