体重と身長は、学歴や年収などの社会経済的地位に影響を及ぼすことが、英国・エクセター大学のJessica Tyrrell氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年3月8日号に掲載された。社会経済的地位は罹病や死亡に影響を及ぼすとされ、最近の調査ではロンドン市の最貧困地区と最も裕福な地区では、男性の寿命に18年もの差があることが報告されている。一方、高身長や低BMIは社会経済的地位が高いことと関連するが、どちらが原因でどちらが結果かはよくわかっておらず、この問題は保健衛生や福利政策にとって重要とされる。
世帯年収などの指標に関して身長およびBMIの因果的作用を検証
研究グループは、身長および体重は、年収などの社会経済的地位に影響を及ぼす因果的役割を持つかとの問いに答えるための検討を行った。
メンデル無作為化解析法を用い、世帯年収など社会経済的地位の5つの指標に関して、身長およびBMIの因果的作用を検証した。遺伝子型は受胎時に無作為に割り付けられるが、メンデル無作為化解析はこの事実を活用するため、遺伝学的因子以外の因子による交絡の影響を受けないとされる。
解析には、英国バイオバンクに登録された37~73歳の英国人家系の男女11万9,669人のデータを用いた。5つの指標は、(1)正規の就学期間を終了した年齢、(2)教育レベル、(3)職務等級、(4)世帯年収、(5)タウンゼント剥奪指標(特定の集団内の物質的な窮乏の指標)であった。
全体の平均年齢は56.9歳(7.9標準偏差[SD])、男性が47.3%、平均BMIは27.5(4.8 SD)、平均身長は168.8cm(9.2 SD)であった。
身長が高くなると世帯年収がより高額
低身長および高BMIは、低い社会経済的地位と関連が認められた。低身長と低い社会経済的地位の関連は男性でより強力で、高BMIと低い社会経済的地位の関連は女性でより強い傾向がみられた。
たとえば、BMIが1 SD高くなると、男性の世帯年収が210ポンド(276ユーロ、300ドル、95%信頼区間[CI]:84~420、p=0.006)低くなり、女性では世帯年収が1,890ポンド(95%CI:1,680~2,100、p=6×10-15)低下した。
遺伝子解析では、これらの関連には部分的に因果関係があることを示すエビデンスが得られた。
遺伝学的に確定された身長が1 SD(6.3cm)高くなると、正規の就学期間を終了した年齢が0.06年(95%CI:0.02~0.09、p=0.01)高くなり、専門性の高い職業に就くオッズ比が1.12(95%CI:1.07~1.18、p=6×10-7)に上がり、世帯年収は1,130ポンド(95%CI:680~1,580、p=4×10-8)高額となった。これらの関連は、男性でより強力だった。
女性では、遺伝学的に確定されたBMIが1 SD(4.6)上昇すると、世帯年収が2,940ポンド(95%CI:1,680~4,200、p=1×10-5)低下し、窮乏の程度が0.10(0.04~0.16、p=0.001)増大した。
著者は、「身長とBMIは社会経済的地位に部分的に重要な影響を及ぼすとのエビデンスを支持するデータが得られた」とし、「身体測定値の特徴や社会経済的地位を導く因子や、これらの特徴から導かれる因子を理解するには、さらなる検討を要する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)