慢性腰痛に対し、瞑想とヨガによるマインドフルネス・ベースのストレス低減療法(MBSR)は、26週間後の痛みや機能的制限の改善について、通常ケアよりも有効で、認知行動療法(CBT)と同程度の効果があることが示された。米国・ワシントン大学のDaniel C. Cherkin氏らが、342例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、JAMA誌2016年3月22・29日号で発表した。MBSRの効果についての試験はこれまで大規模だが1試験のみで高齢者のみを対象としたものしか行われていなかった。
MBSRとCBTを週2時間、8週間実施
研究グループは、2012年9月~14年4月にかけて、ワシントン州在住で慢性腰痛のある342例の成人患者を対象に無作為化試験を行った。
被験者を無作為に3群に分け、1群(116例)にはMBSRを、別の1群(113例)には疼痛に関する思考と行動を修正するトレーニングによるCBTを、もう1群(113例)には通常ケア(あらゆるケアを包含;対照)を行い、その効果を比較した。MBSRとCBTはいずれも週1回2時間を、8週間にわたり実施した。
主要アウトカムは2つで、26週時点での機能的制限(修正ローランド障害質問票[RDQ]:0~23)と自己申告による腰痛症状の評価(尺度:0~10)の、ベースラインから臨床的に意味のある改善(30%以上)だった。
被験者の年齢は20~70歳で、平均年齢は49.3歳、女性は65.7%、平均腰痛期間は7.3年(範囲:3ヵ月~50年)だった。
RDQスコア3割以上改善は、MBSR群・CBT群で約6割、対照群で約4割
8回のMBSRまたはCBTセッションのうち、6回以上参加した被験者は53.7%で、26週間の試験を完了したのは86.0%だった。
ITT解析の結果、26週時点でRDQスコアについて臨床的に意味がある改善がみられたのは、MBSR群が60.5%、CBT群が57.7%で、対照群44.1%よりも有意に高率であった(すべてのp=0.04、MBSR群 vs.対照群の相対リスク[RR]:1.37、CBT群 vs.MBSR群のRR:0.95、CBT群 vs.対照群のRR:1.31)。
26週時点での自己申告による腰痛症状の評価について臨床的に意味のある改善がみられたのは、MBSR群が43.6%、CBT群が44.9%、対照群が26.6%だった(すべてのp=0.01、MBSR群 vs.対照群のRR:1.64、CBT群 vs.MBSR群のRR:1.03、CBT群 vs.対照群のRR:1.69)。
これらの結果を踏まえて著者は、「MBSRは、慢性腰痛患者にとって有効な治療選択肢になりうることが示された」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)