薬剤抵抗性発作性心房細動に対するクライオバルーンアブレーション(冷凍アブレーション)は、高周波アブレーションに対し非劣性であることが認められ、安全性も同等であった。ドイツ・Asklepios Klinik St. GeorgのKarl-Heinz Kuck氏らが、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「FIRE AND ICE」の結果、報告した。現在のガイドラインでは、薬剤抵抗性発作性心房細動の治療としてカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術が推奨されている。高周波アブレーションが最も頻用されているが、冷凍アブレーションは比較的簡便で手術時間の短縮や合併症の軽減などが期待できる。これまで、両者の比較試験は小規模なものが多く、無作為化試験はほとんどなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月4日号掲載の報告。
769例を対象に非劣性試験を実施
研究グループは、2012年1月19日~15年1月27日の間に、8ヵ国16施設において、クラスI群またはIII群抗不整脈薬あるいはβブロッカーに抵抗性の症候性発作性心房細動患者769例を登録した。このうちスクリーニング失敗例等を除いた762例をクライオバルーンアブレーション(クライオバルーン)群または高周波アブレーション(RF)群に、施設および年齢(≦65歳 vs.>65歳)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた(それぞれ378例および384例)。
有効性に関する主要評価項目は、アブレーション後90日以降の治療不成功(30秒以上持続する心房細動の再発、心房粗動または心房頻拍の発生、クラスI群またはIII群抗不整脈薬の使用、再アブレーション)で、非劣性マージンはハザード比(HR)1.43とした。
安全性の主要評価項目は、全死因死亡、脳血管イベント(脳卒中または一過性脳虚血発作)、重篤な治療関連有害事象の複合エンドポイントであった。
アブレーション後90日以降の治療不成功は冷凍35%、高周波36%
解析対象は、割り付け後にアブレーションが実施された750例(クライオバルーン群374例、RF群376例)で、追跡期間は平均1.5年であった。
アブレーション後90日以降の治療不成功は、クライオバルーン群138例、RF群143例であった。Kaplan-Meier法で推算した1年時のイベント発生率は、それぞれ34.6%、35.9%で、HRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.76~1.22)であり、クライオバルーン群はRF群に対して非劣性であることが認められた(非劣性のp<0.001、log-rank検定)。
安全性の主要評価項目の発生は、クライオバルーン群40例、RF群51例に認められた。Kaplan-Meier法で推定した1年時のイベント発生率は、それぞれ10.2%、12.8%であった(HR:0.78、95%CI:0.52~1.18、p=0.24)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)