法的なアルコール入手環境の違いという観点から心疾患との関連を検討した、米国・カリフォルニア大学のJonathan W Dukes氏らの研究成果が発表された。入手がしやすい地域の住民では心房細動が有意に多く、心筋梗塞およびうっ血性心不全は有意に少なかった。しかし規制が緩和されると短期間でうっ血性心不全のリスクの増大がみられたという。アルコールと心疾患の関連は複雑で相反する結果が報告されている。これまでの関連を検討した観察研究は、アルコール摂取について自己申告に基づいたもので、交絡因子がアウトカムに関連していた可能性があり、研究グループは、1州におけるアルコール販売規制の郡ごとの違いに着目して観察コホート研究を行った。BMJ誌オンライン版2016年6月14日号掲載の報告。
テキサス州の各群の法規制の違いと心疾患発生との関連を調査
米国テキサス州の病院をベースに、Texas Inpatient Research Data Fileを用いて、2005~10年の間に入院した、法的なアルコール販売規制のない郡と厳しく販売が規制されている郡に住む21歳以上の患者110万6,968例を特定し、心疾患との関連を調べた。
主な心血管アウトカムは、心房細動、急性心筋梗塞、うっ血性心不全であった。検証解析として、アルコール乱用(alcohol misue)、アルコール性肝疾患の有病率(%)と罹患率(1,000人年当たり)についても調べた。
規制なし郡住民は心房細動が有意に多い
規制なし郡住民のほうが、アルコール乱用、アルコール性肝疾患はより多くみられた。アルコール乱用の有病率は2.6 vs.2.5%、罹患率は3.6 vs.2.5例であり、アルコール性肝疾患は0.7 vs.0.4%、1.4 vs.0.8例であった。
多変量(年齢、人種、性別等)補正後、心房細動については、規制なし郡住民のほうが有意に多いことが認められた。有病率のオッズ比(OR)は1.05(95%信頼区間[CI]:1.01~1.09、p=0.007)、罹患率のORは1.07(同:1.01~1.13、p=0.014)であった。一方で、心筋梗塞については、規制なし郡住民が有意に少なかった。有病率ORは0.83(同:0.79~0.87、p<0.001)、罹患率ORは0.91(0.87~0.99、p=0.019)。うっ血性心不全も有意に少なく、有病率ORは0.87(0.84~0.90、p<0.001)であった。
また、規制ありから規制なしに変わった郡では、アルコール乱用、アルコール性肝疾患、心房細動、うっ血性心不全の発生が統計的に有意に高率となった。心筋梗塞については差は検出されなかった。転換前後各15ヵ月間の発生を比較したORは、アルコール乱用1.31(95%CI:1.19~1.43、p<0.001)、アルコール性肝疾患1.61(1.35~1.91、p<0.001)、心房細動1.07(1.03~1.12、p=0.001)、うっ血性心不全1.07(1.04~1.11、p<0.001)、心筋梗塞は0.99(0.91~1.07、p=0.746)であった。