英国公的施設におけるダウン症候群のNIPT導入効果/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/07/19

 

 ダウン症候群の精度の高いスクリーニング検査である、DNA解析データに基づく非侵襲的出生前検査(NIPT)について、その受け入れ状況、アウトカムおよびコストに関する調査が行われた。NIPTは、利用できる機会が世界的に広がっているが、主として行われているのは私的なマタニティ施設である。また、公的施設での実施コストやその影響について、臨床設定での評価は行われていなかった。本論文では、英国・UCL Institute of Child HealthのLyn S Chitty氏らが、同国8つのNHSマタニティ施設で調査。その結果、公的施設での付随的な実施は、ケアの質や女性の選択に関する改善などを可能にすることが明らかになったという。BMJ誌オンライン版2016年7月4日号掲載の報告。

英国内8つのNHS施設でNIPT導入の利点とコストを調査
 研究グループは、前向きコホート研究にて、NHSマタニティ施設へのダウン症候群に関するNIPT導入の利点とコストについて調べた。

 2013年11月1日~2015年2月28日に、英国内8つのNHSマタニティ施設で、従来スクリーニング法で1,000分の1以上のリスクがある全妊婦を対象とし、それら被験者の、NIPTの受け入れ、ダウン症候群の検出、侵襲的検査の実施や流産回避について調べた。妊娠のアウトカムとコストについてNIPT実施との関連を調べ、現行スクリーニングの場合と比較。ナショナルデータセットと結合したNIPTの受け入れと侵襲的検査に関する試験データを用いて確認した。

約8割が受け入れ、ダウン症候群検出が増大、コストパフォーマンスにも優れる
 対象被験者は3,175例で、それら妊婦に対し前向きにNIPTの提示が行われた。そのうち、NIPTを受けたのは2,494例(78.6%)であった。

 被験者のうちダウン症候群リスクが150分の1以上であった934例では、NIPTを受けたのは695例(74.4%)であった。166例(17.8%)が侵襲的検査を選択し、73例(7.8%)はそれ以上の検査を拒んだ。また、リスクが151分の1~1,000分の1の2,241例でNIPTを選択したのは1,799例(80.3%)であった。

 ダウン症候群の診断が確定した71例について調べたところ、NIPT後の診断であった13/42例(31%)、および侵襲的検査後の2/29例(7%)が妊娠を持続し、12例の出生が認められた。

 年間スクリーニング集団69万8,500例において、ダウン症候群リスクが150分の1以上の妊婦に付随的な検査としてNIPTを提示することで、検出が195件(95%不確定区間[UCI]:-34~480)増大する可能性が示された。また3,368件(同:2,279~4,027)の侵襲的検査の減少、および17件(同:7~30)の検査処置に関連した流産の減少につながる可能性が示された。一方で総コスト(-4万6,000ポンド)については、有意な差はなかった(同:-180万2,000~266万1,000)。

 NIPTスクリーニング戦略の限界コストについては非常に感度の高い結果が得られた。スクリーニング閾値を高リスク群に的を絞った150分の1とした場合、NIPTコストが256ポンドよりも安価であれば、現行スクリーニングよりも安価となることが示された。

 リスク閾値を下げると、ダウン症候群の検出症例数は増えるが、全体コストも増大する。しかし、侵襲的検査および関連流産の減少は保持されることが示された。

 これらの結果を踏まえて著者は、「公的施設での付随的検査としてのNIPT実施というダウン症候群スクリーニングプログラムは、ケアの質、女性にとっての選択肢を改善し、現行コスト内での全体的なパフォーマンスを向上する」と結論する一方で、「NIPTを利用した一部の女性では、それによる情報がダウン症児を出産する覚悟を決めることに結び付いただけであることも認められ、ダウン症児出生率が有意に変化しない可能性も示唆された。今後、NIPTの実施受け入れと情報に基づく意思決定について、研究設定以外によるさらなる検討が必要と思われる」とまとめている。