体外受精は乳がんリスクを増加させるか?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/07/29

 

 1980~95年にオランダで不妊治療を受けた女性を平均21年追跡し、乳がんリスクについて体外受精(IVF)療法群と非IVF療法群を比較したが、体外受精群のリスク増加はみられず、一般集団と比較しても乳がんリスクに有意な差はないことが示された。オランダがん研究所のAlexandra W. van den Belt-Dusebout氏らが、後ろ向きコホート研究「OMEGA」の結果、報告した。これまでにいくつかの研究で、IVFのため卵胞刺激を行った女性の乳がんリスク増加が報告されているが、追跡期間が短いなどの限界があり、結論は得られていなかった。今回の所見を受けて著者は、「IVF療法を受けた女性で乳がんリスクは増加しない」とまとめている。JAMA誌2016年7月19日号掲載の報告。

約2万5,000例を21年追跡し、IVF群と非IVF群で乳がんリスクを比較
 研究グループは、OMEGA研究から、IVFクリニック12施設で1983~95年にIVF療法を開始した女性1万9,158例(IVF群)と、1980~95年にIVF以外の不妊治療を開始した女性5,950例(非IVF群)について解析した。IVFの卵巣刺激法、IVF以外の不妊治療、潜在的交絡因子に関する情報を、医療記録および質問票の郵送を通して収集した。

 主要評価項目は、不妊治療を実施している女性の浸潤性/非浸潤性乳がんの発症率とし、IVF群の乳がんリスクについて、一般集団ならびに非IVF群と比較した(それぞれ、標準化罹患比[SIR]、ハザード比[HR])。がん発生率は、オランダのがん登録(Netherlands Cancer Registry[NCR]、1989~2013年)に基づいた。

IVF群の乳がんリスクは、一般集団や非IVF群と有意差なし
 計2万5,108例(ベースラインの平均年齢32.8歳、平均IVF周期3.6)のうち、平均追跡期間21.1年後に、839例が浸潤性乳がん、109例が非浸潤性乳がんを発症した。追跡終了時の平均年齢は、IVF群53.8歳、非IVF群55.3歳であった。

 IVF群の乳がんリスクは、一般集団(SIR:1.01、95%CI:0.93~1.09)、非IVF群(HR:1.01、95%CI:0.86~1.19)のいずれの比較においても、有意差は認められなかった。

 55歳時の乳がん累積罹患率は、IVF群3.0%、非IVF群2.9%(p=0.85)であった。IVF群と非IVF群のSIRは、治療後20年以上経過しても増加しなかった(IVF群:0.92[95%CI:0.73~1.15]、非IVF群:1.03[95%CI:0.82~1.29)。

 7周期以上IVFを実施した女性のほうが、1~2周期と比較して乳がんリスクが有意に低下し(HR:0.55、95%CI:0.39~0.77)、初回IVF周期で反応不良(卵母細胞<4)の後の乳がんリスクが、通常反応(収集した卵母細胞≧4)と比較して有意に低下した(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96)。初産の時期で分類した場合、IVF前に出産歴のある女性と、IVF後に初産を迎えた女性との間で、IVF群と非IVF群の乳がんリスクは同等であり、未産婦の女性との有意差は確認されなかった。

 著者は研究の限界として、対象のわずか14%しか60歳に達しておらず、追跡期間終了時の閉経の年齢や状態が不明であることを挙げ、IVFの卵胞刺激後の閉経後乳がんリスクを評価する、さらなる追跡調査の必要性を指摘している。

(医学ライター 吉尾 幸恵)