分化型甲状腺がんの1次治療後の画像診断検査の実施は、再発治療の増加と関連しているが、放射性ヨウ素スキャンによるもの以外は、疾患特異的生存率の改善には結び付いていないことが、米国・ミシガン大学のMousumi Banerjee氏らの検討で明らかにされた。米国では過去20年で甲状腺がん発症率が上昇しているが、その上昇の大半は死亡に至らない低リスク甲状腺がんの増加による。一方で同一時期に甲状腺がんの1次治療後の画像診断施行も増加したことから、研究グループは、この画像診断の実施が再発治療や疾患死亡の低下と関連していないかを調べた。著者は、「検討の結果は、1次治療後の不必要な画像診断を抑制することの重要性を強調し、甲状腺がんのサーベイランスのあり方を見直す必要があることを提示するものであった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年7月20日号掲載の報告。
1998~2011年の画像診断と再発治療、死亡との関連を評価
研究グループは、住民ベースの後ろ向きコホート研究法にて、米国NCIのSurveillance Epidemiology and End Results(SEER)とメディケアデータベースを結び付けて、検討を行った。
1998~2011年に分化型甲状腺がんと診断された2万8,220例の患者を2013年まで追跡(追跡期間中央値69ヵ月)。分化型甲状腺がんの再発治療の記録(追加的頸部手術、追加的放射線ヨウ素療法、または放射線療法)、分化型甲状腺がんによる死亡について調べた。傾向スコア分析法にて、画像診断(頸部超音波検査、放射性ヨウ素スキャン、PETスキャン)と再発治療(ロジスティックモデルにて)、および死亡(Cox比例ハザードモデルにて)との関連を評価した。
頸部超音波、PETは疾患特異的生存率に影響せず
1998~2011年の間に、がん発症率(率比:1.05、95%信頼区間[CI]:1.05~1.06)、画像診断検査(1.13、1.12~1.13)、再発治療(1.01、1.01~1.02)はいずれも増大していた。死亡率は、統計的に意味のある変化はみられなかった(0.98、0.96~1.00)。
多変量解析において、頸部超音波検査は、追加的手術(オッズ比:2.30、95%CI:2.05~2.58)、追加的放射性ヨウ素療法(1.45、1.26~1.69)の尤度を増大することが示唆された。
放射性ヨウ素スキャンは、追加的手術(3.39、3.06~3.76)、追加的放射性ヨウ素治療(17.83、14.49~22.16)、および放射線療法(1.89、1.71~2.10)との関連がみられた。
疾患特異的生存率への有意な影響は、頸部超音波検査(HR:1.14、95%CI:0.98~1.27)、PETスキャン(0.91、0.77~1.07)では認められなかったが、放射性ヨウ素スキャンでは改善が認められた(0.70、0.60~0.82)。