TAVI施行時の脳保護デバイスの効果を確認/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/08/22

 

 重症大動脈弁狭窄症への経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)施行時の脳保護デバイス「Claret Montage Dual Filter System」(Medtronic社製)使用の有用性が、ドイツ・ライプツィヒ大学のStephan Haussig氏らが行った無作為化試験「CLEAN-TAVI」の結果、示された。TAVI後の死亡の重大予測因子としてなお脳卒中が存在している。検討では脳病変部位の検出に、拡散強調MRI(DW-MRI)が用いられ、保護領域と思われる部位の虚血性脳血管障害の頻度減少が示されたという。JAMA誌2016年8月9日号掲載の報告。

TAVI後2日時点の保護領域の新規病変の変化で評価
 試験は、脳保護デバイスの有効性を評価するため、TAVI後患者の脳病変の数および容積を評価して行われた。ライプツィヒ大学ハートセンターでTAVIを施行するハイリスクの重症大動脈弁狭窄患者を対象とし、研究者主導の単施設盲検無作為化試験であった。

 被験者を無作為に2群に割り付け、一方にはTAVI施行時に脳保護デバイスを使用(フィルター群)、もう一方には同デバイスを用いなかった(対照群)。ベースライン、TAVI後2日目、7日目に脳MRIを行った。患者の登録は2013年4月~2014年6月に行われ、2014年7月時点で少なくとも1ヵ月間のフォローアップが行われていた。

 主要エンドポイントは、TAVI後2日時点で保護領域と思われる病変で術後新たに認められたDW-MRI陽性病変数であった。第1階層副次アウトカムは、TAVI後に保護領域と思われる病変で認められた新病変の容積であった。

新規虚血性病変の数、容積とも有意に減少

 試験には100例が登録された。平均年齢はフィルター群(50例)が80.0(SD 5.1)歳、対照群(50例)が79.1(4.1)歳、logistic EuroScoresで評価した手術リスクスコアは、フィルター群16.4(10.0)%、対照群14.5(8.7)%であった。

 主要エンドポイントの発生数は、フィルター群4.00(IQR:3.00~7.25) vs.対照群10.00(6.75~17.00)で、フィルター群が有意に少なかった(差:5.00、IQR:2.00~8.00、p<0.001)。
 第1階層副次アウトカムについて、TAVI後の新規病変容積は、フィルター群242mm3(95%信頼区間[CI]:159~353) vs.対照群527mm3(同:364~830)で、フィルター群で有意に少なかった(差:234mm3、95%CI:91~406、p=0.001)。

 有害事象とみなされた報告例は、対照群の1例で、30日間のフォローアップ終了前に発生した死亡例だった。生命に関わるような重大出血は、フィルター群1例、対照群1例で、重大血管合併症はそれぞれ5例と6例、急性腎不全は1例と5例の発生であった。また、フィルター群3例で、開胸手術が行われた。

 結果を踏まえて著者は、「より大規模な試験で、神経学的・認知機能への脳保護デバイス使用の効果を評価すること、また新規部位発症を予防するため脳全体を保護可能なデバイスを開発していく必要があるだろう」と述べている。

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員