週14杯未満のアルコール摂取は、受胎能に明らかな影響はないようである。ビールとワインで受胎確率に差はないことも確認された。デンマーク・オーフス大学病院のEllen M Mikkelsen氏らが、どの程度のアルコール摂取が女性の受胎確率に影響を及ぼすかを検証した前向きコホート研究の結果を報告した。これまでは、少量~中等量のアルコール摂取は受胎能低下と関連することが報告されており、妊娠を希望する女性はアルコール摂取を控えるよう推奨されていた。ただし今回の結果について著者は、「受胎後、最初の数週間、胎児はアルコールに対してとくに脆弱であるため、妊娠を積極的に望む女性は、妊娠が否定されるまで妊娠可能期間のアルコール摂取は控えるべきである」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年8月31日号掲載の報告。
妊娠前の女性約6,000例を、前向きに12ヵ月追跡したインターネット調査
本研究は、“Snart-Gravid”およびその後継の“SnartForaeldre”研究の一部として、ウェブサイトおよびEメールを介して登録とデータ収集が行われた。参加者は、登録時および月2回、12ヵ月間または妊娠までアンケートに回答した。登録基準は、男性パートナーと安定した関係にあり、妊娠を望みかつ不妊治療を受けていない21~45歳のデンマーク在住女性であった。
2007年6月1日~2016年1月5日に登録され選択基準を満たした6,120例が解析対象となった。アルコール摂取量は、ビール330mL、赤/白ワイン120mL、デザートワイン50mL、蒸留酒20mLを1杯分とし、1週間の平均摂取量(0、1~3、4~7、8~13、≧14杯)で層別解析した。
エンドポイントは、妊娠成立(転帰を問わない)で、比例回帰モデルを用い受胎確率比を算出した。
週14杯以上では受胎確率が18%減少
追跡期間中、4,210例(69%)が妊娠した。アルコール摂取量中央値は2.0杯/週であった(四分位範囲:0~3.5)。アルコール非摂取と比較すると各アルコール摂取量(1~3、4~7、8~13、14杯以上/週)での調整受胎確率比は、それぞれ0.97(95%CI:0.91~1.03)、1.01(0.93~1.10)、1.01(0.87~1.16)、0.82(0.60~1.12)であった。また、ワインのみ(≧3杯)、ビールのみ(≧3杯)または蒸留酒のみ(≧2杯)を摂取する女性の非摂取に対する調整受胎確率比は、それぞれ1.05(0.91~1.21)、0.92(0.65~1.29)、0.85(0.61~1.17)であった。
なお、今回のデータは、通常飲酒と短時間での大量飲酒の区別はしていない。妊娠可能期間中に大量のアルコールを摂取した場合は、この区別が重要となる可能性がある。そのほか著者は研究の限界として、対象者が妊娠成立前という選択バイアス、男性パートナーのアルコール摂取に関する情報不足、アルコール摂取量は自己報告、などを挙げている。
(医療ライター 吉尾 幸恵)