LDL受容体の発現増加を介して低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値を低下させるスタチン療法と非スタチン療法の比較において、LDL-C値低下当たりの主要血管イベントの相対リスクは同等であることが明らかとなった。LDL-C値の低下が、主要冠動脈イベント発生率の低下と関連することも確認された。これまで、非スタチン療法によるLDL-C低下の臨床的な有益性はよくわかっていなかったが、米国・ハーバード大学医学大学院のMichael G. Silverman氏らが、LDL-C低下と相対的心血管リスク減少との関連を、スタチン療法 vs.非スタチン療法で検討するシステマティックレビューとメタ解析を行い報告した。JAMA誌2016年9月27日号掲載の報告。
異なる9種のLDL-C降下療法についてメタ解析
研究グループは、MEDLINEおよびEMBASEデータベースを用い、1966年~2016年7月に発表された異なる9種類のLDL-C降下療法(スタチン療法および非スタチン療法)に関する無作為化臨床試験で、心筋梗塞を含む臨床転帰が報告された試験を検索した。調査期間が6ヵ月未満または臨床的なイベントが50症例未満の研究は除外。2人の研究者が独立してデータを抽出し、メタ回帰解析を行った。
主要評価項目は、LDL-C値の絶対的減少による主要血管イベント(心血管死、急性心筋梗塞または他の急性冠症候群、冠動脈再建術、脳卒中)の相対リスク、およびLDL-C達成値と主要冠動脈イベント(冠動脈死または心筋梗塞)5年発症率との関連であった。
主要血管イベントリスクがスタチン療法で23%、非スタチン療法で25%低下
計49試験の31万2,175例(平均年齢62歳、女性24%)、主要血管イベント3万9,645例がレビューに組み込まれた。ベースラインの平均LDL-C値は3.16mmol/L(122.3mg/dL)であった。
LDL-C値1-mmol/L(38.7mg/dL)低下当たりの主要血管イベント減少の相対リスクは、スタチン療法で0.77(95%信頼区間[CI]:0.71~0.84、p<0.001)、非スタチン療法4種(食事療法、胆汁酸排泄促進剤、空腸バイパス術、エゼチミブ)で0.75(95%CI:0.66~0.86、p=0.002)であった(両群間差p=0.72)。これら5種類の治療を併せると、LDL-C値1-mmol/L低下当たりの主要血管イベント減少の相対リスクは0.77(95%CI:0.75~0.79、p<0.001)であった。
他の介入については、臨床試験でのLDL-C値低下の程度を基にした相対リスクの観測値 vs.予測値は、ナイアシンでは0.94(95%CI:0.89~0.99) vs.0.91(同:0.90~0.92)で有意差はみられなかったが(p=0.24)、フィブラート系薬では0.88(0.83~0.92) vs.0.94(0.93~0.94)と予測値より観測値が有意に低かった(p=0.02、すなわちリスク低下が大きかった)。一方、CETP阻害薬は1.01(0.94~1.09)vs.0.90(0.89~0.91)で、予測よりもリスク低下が少なかった(p=0.02)。PCSK9阻害薬は0.49(0.34~0.71) vs.0.61(0.58~0.65)で有意差は認められなかった(p=0.25)。
LDL-C達成値(絶対値)は、主要冠動脈イベント発生率と有意に相関しており、1次予防試験ではLDL-C値1mmol/L低下当たりイベント発生率は1.5%低下(95%CI:0.5~2.6、p=0.008)、2次予防試験では4.6%低下した(同:2.9~6.4、p<0.001)。
【お知らせ】
本文内に誤解を招く表記があったため、一部変更いたしました(2016年10月12日)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)