冠動脈手術時のトラネキサム酸はアウトカムを改善するか/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/04

 

 合併症リスクのある冠動脈手術患者に対し、トラネキサム酸を投与しても、死亡や血栓性合併症のアウトカムは改善しない。トラネキサム酸を投与した群では、プラセボ群に比べ、大出血や再手術を要する心タンポナーデのリスクは減少したものの、痙攣発生率は増大が示された。オーストラリア・モナシュ大学のPaul S. Myles氏らが行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、明らかにした。トラネキサム酸は、冠動脈手術の際に出血リスクを減少することは知られていたが、アウトカムを向上するかどうかは不明だった。また、トラネキサム酸の持つ血栓形成促進性や痙攣誘発性効果についての懸念も指摘されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月23日号掲載の報告。

術後30日の死亡・血栓性合併症の発生率を比較

 研究グループは、2006年3月~2015年10月にかけて、冠動脈手術が予定されており周術期合併症リスクがある患者4,631例を対象に、2×2要因デザインを用いて、トラネキサム酸またはプラセボ、アスピリンまたはプラセボを投与した。

 主要評価項目は、術後30日以内の死亡または血栓性合併症(非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、腎不全、腸梗塞)の複合エンドポイントだった。被験者の平均年齢は、トラネキサム酸群が66.8歳、プラセボ群が67.0歳だった。
 

痙攣発生率、プラセボ群0.1%、トラネキサム酸群0.7%

 その結果、複合エンドポイント発生率は、トラネキサム酸群が16.7%(386/2,311例)、プラセボ群が18.1%(420/2,320例)と、両群で同等だった(相対リスク:0.92、95%信頼区間:0.81~1.05、p=0.22)。

 入院中に注入した血液製剤の総量は、プラセボ群が7,994単位だったのに対し、トラネキサム酸群では4,331単位と有意に少なかった(p<0.001)。

 大出血や再手術を要する心タンポナーデの発生率も、プラセボ群が2.8%だったのに対し、トラネキサム酸群は1.4%と、有意に低率だった(p=0.001)。

 一方で、痙攣発生率は、プラセボ群が0.1%に対しトラネキサム酸群では0.7%と、有意に高率だった(p=0.002、フィッシャーの正確確率検定による)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 許 俊鋭( きょ しゅんえい ) 氏

東京都健康長寿医療センター センター長

J-CLEAR評議員