介護施設に入所している高齢女性において、1年間にわたりクランベリーカプセルを投与したが、プラセボと比較して細菌尿+膿尿の件数に有意差は認められなかった。米国・エール大学医学大学院のManisha Juthani-Mehta氏らが、クランベリーカプセル内服の細菌尿+膿尿に対する有効性を評価する目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、報告した。細菌尿+膿尿は介護施設の高齢女性に多く、クランベリーカプセルはこうした尿路感染症(UTI)に対する非抗菌的な予防法として知られているが、その根拠には議論の余地があった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。
185例に1年間投与、細菌尿+膿尿の頻度をプラセボと比較
研究グループは、2012年8月24日~2015年10月26日に、コネチカット州ニューヘイブンの50マイル(80km)圏内にある介護施設21施設において、長期入所中の65歳以上の女性185例(ベースライン時での細菌尿+膿尿の有無は問わない)を、治療群とプラセボ群に無作為割り付けし比較した。
治療群(92例)は、1カプセル当たり活性成分プロアントシアニジン36mgを含むクランベリーカプセル2個(合計72mg、クランベリージュース20オンスに相当)を、プラセボ群(93例)はプラセボ2個を1日1回内服した。
主要評価項目は、細菌尿(1~2種類の微生物が尿培養で105コロニー形成単位[CFU]/mL以上)+膿尿(尿中白血球陽性)とし、2ヵ月ごとに1年間評価した。副次評価項目は、症候性UTI、全死因死亡数、総入院数、多剤耐性菌(MRSA、VRE、多剤耐性グラム陰性桿菌)の分離数、UTI疑いに対する抗菌薬使用、すべての抗菌薬使用とした。
無作為化された185例(平均年齢86.4歳[SD 8.2]、白人90.3%、ベースラインで細菌尿+膿尿あり31.4%)のうち、147例が試験を完遂し、服薬アドヒアランスは80.1%であった。
細菌尿+膿尿の頻度は両群で有意差を認めず
未調整前の解析において、計6回の尿検査で得られた全検体における細菌尿+膿尿の割合は、治療群25.5%(95%信頼区間[CI]:18.6~33.9)、プラセボ群29.5%(同:22.2~37.9)であった。一般化推定方式モデルによる補正後の解析では、両群間に有意差は認められなかった(それぞれ29.1% vs.29.0%、オッズ比[OR]:1.01、95%CI:0.61~1.66、p=0.98)。
症候性UTI発症数(治療群10件 vs.プラセボ群12件)、死亡率(それぞれ17例 vs.16例、100人年当たり20.4例 vs.19.1例、死亡率比[RR]:1.07、95%CI:0.54~2.12)、入院数(33件 vs.50件、100人年当たり39.7件 vs.59.6件、RR:0.67、95%CI:0.32~1.40)、多剤耐性グラム陰性桿菌関連細菌尿(9件 vs.24件、100人年当たり10.8件 vs.28.6件、RR:0.38、95%CI:0.10~1.46)、UTI疑いに対する抗菌薬使用(抗菌薬使用日数692 vs.909日、8.3 vs.10.8日/人年、RR:0.77、95%CI:0.44~1.33)、およびすべての抗菌薬使用(抗菌薬使用日数1,415 vs.1,883日、17.0 vs.22.4日/人年、RR:0.76、95%CI:0.46~1.25)で、有意差は確認されなかった。
著者は研究の限界として、試験登録時の細菌尿+膿尿の有無を制限していなかったことなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)