生後6~23ヵ月の急性中耳炎乳幼児において、抗菌薬の投与期間を短縮した場合の予後は標準治療と比較して良好とはいえず、有害事象の発現率低下や抗菌薬耐性の出現率低下も認められなかった。米国・ピッツバーグ大学医療センターのAlejandro Hoberman氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相試験の結果を報告した。急性中耳炎の小児で抗菌薬の投与期間を制限することは、抗菌薬耐性リスクを低下させ得る戦略と考えられているが、これまで臨床試験でその効果は確認されていなかった。NEJM誌2016年12月22日号掲載の報告。
アモキシシリン・クラブラン酸の5日間投与と10日間投与を比較する非劣性試験
研究グループは、2012年1月~2015年9月に、生後6~23ヵ月の急性中耳炎患児520例を、アモキシシリン・クラブラン酸による標準治療群(10日間投与)または短期治療群(5日間投与後、プラセボ5日間投与)のいずれかに無作為に割り付け、臨床効果を評価した。
主要評価項目は、治療失敗率(無作為化後72時間~発症16日目における症状または耳鏡所見の悪化、もしくは投与終了までに急性中耳炎に起因した症状と所見のほぼ完全な消失を認めない)、再発率(16日目以降の症状発現)および鼻咽頭保菌率で、非劣性を検証した。症状はAcute Otitis Media-Severity of Symptoms(AOM-SOS)スコア(0~14点、得点が高いほど重症度が高い)を用いて評価し、統計解析はintention-to-treat解析で行った。
標準治療群と比較して、短期治療群の有効性は確認されず
短期治療群は、標準治療群と比較して治療失敗率が高かった(34%[77/229例] vs.16%[39/238例]、絶対差:17%、95%信頼区間[CI]:9~25%)。6~14日目の平均症状スコアは短期治療群1.61、標準治療群1.34(p=0.07)、12~14日目ではそれぞれ1.89および1.20(p=0.001)であった。症状が改善(治療終了時の症状スコアがベースラインから50%超低下)した患児の割合は、短期治療群のほうが標準治療群より低かった(80%[181/227例] vs.91%[211/233例]、p=0.003)。
再発率、有害事象発現率、ペニシリン非感受性菌の鼻咽頭保菌率は、両群で有意差はなかった。治療失敗率は、週に10時間以上小児3人以上と接触した患児のほうがそれより接触時間が短い患児より高く(p=0.02)、また、両耳感染の患児のほうが片耳感染の患児よりも高値であった(p<0.001)。
著者は、本研究は、最も治療を失敗しやすくかつ再発を起こしやすい年齢層の2歳未満を対象としていることが強みであるが、同時に、2歳以上の年齢層には一般化できない点で限定的であると述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)