ドイツの医薬品市販後調査について、有害事象の検出力が乏しく、調査内容の大部分がスポンサー企業により非公開とされているなど、医薬品安全性の向上にはつながっていない現状が明らかにされた。ドイツに本部がある、世界各国の汚職を監視している非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルのAngela Spelsberg氏らが、約560件の市販後調査について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2017年2月7日号で発表した。
3つの監督機関を通じて調査結果を入手
Spelsberg氏らは、ドイツの医薬品市販後調査の3つの監督機関を通じ、2008~10年にかけて企業が行った市販後調査について、協力医師への報酬、調査に関連する科学的報告書、薬品の有害事象に関する報告など、その実態を検証した。
同監督機関を通じて得た558試験についてみると、各試験の被験者数中央値は600例(平均2,331例、2~7万5,000例)で、各試験に協力した医師数中央値は63人(平均270人、0~7,000人)だった。
1試験当たり医師1人への報酬額、平均1万9,000ユーロ
医師1人当たりへの報酬額の中央値は、患者1人につき200ユーロ(平均441ユーロ、0~7,280ユーロ)で、558試験の医師への報酬総額は2億1,700万ユーロだった。医師1人当たりの1試験に対する報酬額中央値は、2,000ユーロ(平均1万9,424ユーロ)で、その範囲は0~208万ユーロにわたっていた。
また、試験は多岐にわたる医薬品および非医薬品が対象となっており、直近の承認薬に関する試験は3分の1にとどまっていた。さらに、市販後調査のデータ、情報、結果などは、医師とスポンサー企業との契約により非公開で、調査スポンサー企業の所有物とされている実態も明らかになった。
すべての調査報告書から、有害事象に関する報告は1件も特定できず、また科学雑誌に公表された試験は、全体の1%にも満たなかった。
同研究グループは、市販後調査は、まれな有害事象を検出するには被験者数が少なく、また調査に協力している医師らは、内容の非公開についてスポンサー企業に対し義務を負っており、医薬品安全性サーベイランスの向上にはつながっていないと結論付けている。さらに、高い報酬額と内容非公開の義務付けが、医師の有害事象報告に対する態度に影響を与えている可能性があるとも指摘した。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)