原発性胆汁性胆管炎では、患者の最大70%に皮膚そう痒が発現する。開発中の回腸型胆汁酸トランスポータ(IBAT)阻害薬GSK2330672は、皮膚そう痒の重症度を軽減し、重篤な有害事象の発現もなく耐用可能との研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月7日号に掲載された。報告を行った英国・ニューカッスル大学のVinod S Hegade氏らの研究グループは、「本薬は原発性胆汁性胆管炎患者の皮膚そう痒の治療における画期的新薬(first-in-class)であり、新たな重要な進歩となる可能性があるが、下痢の頻度が高いため、長期投与には限界があるかもしれない」と指摘している。
安全性と皮膚そう痒を無作為化クロスオーバー試験で評価
本研究は、皮膚そう痒を伴う原発性胆汁性胆管炎患者における、ヒトIBATの選択的阻害薬GSK2330672の有効性と安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー第IIa相試験(BAT117213試験、GlaxoSmithKline社などの助成による)。
年齢18~75歳の患者が、非盲検下にプラセボを投与する2週間の導入期間の後、GSK2330672またはプラセボを1日2回経口投与する群に無作為に割り付けられ、2週間の治療が行われた。引き続き、ウオッシュアウト期間を置かずに薬剤をクロスオーバーして2週間の治療が行われ、さらに単盲検下にプラセボを投与する2週間のフォローアップが実施された。
主要評価項目は、臨床検査値に基づく安全性および消化器症状評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale:GSRS)による耐用性とした。副次評価項目には、そう痒スコア、原発性胆汁性胆管炎-40(PBC-40)のかゆみスコア、5-Dかゆみスケールのほか、血清総胆汁酸、胆汁酸合成のマーカーである7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)などが含まれた。
2014年3月10日~2015年10月7日に22例が登録された。被験薬→プラセボに11例、プラセボ→被験薬にも11例が割り付けられ、後者の1例が治療開始前に脱落した。1例が、プラセボによるフォローアップを受けなかったが、最終解析に含めた。
3つの患者報告によるそう痒尺度が改善
ベースラインの全体の平均年齢は52.9(SD 10.6)歳、女性が19例(86%)を占めた。平均罹患期間は5(SD 4.8)年だった。
有害事象の発現率は被験薬、プラセボとも81%であった。22例の14日の治療で、被験薬による重篤な有害事象は発現しなかった。
最も頻度の高い有害事象は、被験薬が下痢(7例、プラセボは1例)、プラセボは頭痛(7例、被験薬は6例)であった。被験薬による下痢は軽度であり、最長で4日持続したが、日常生活にはほとんど影響はなく、治療中止や減量も認めなかった。
被験薬の皮膚そう痒に関する評価項目のベースラインからの変化率は、そう痒スコアが-57%(95%信頼区間[CI]:-73~-42、p<0.0001)、PBC-40かゆみスコアが-30%(-42~-20、p<0.0001)、5-Dかゆみスケールは-35%(-45~-25、p<0.0001)であった。これらは、いずれもプラセボに比べ有意に良好であった(そう痒スコア:-23%[p=0.0374]、PBC-40かゆみスコア:-14%[p=0.0335]、5-Dかゆみスケール:-20%[p=0.0045])。
被験薬では、血清総胆汁酸濃度がベースラインの30μMから15μMへと50%低下した(95%CI:-37~-61、p<0.0001)のに対し、プラセボでは12%上昇した(-12~42、p=0.3540)。被験薬の投与を中止すると、血清総胆汁酸濃度は2週間以内にほぼベースライン値に戻った。また、血清C4濃度は、ベースラインの7.9ng/mLから24.7ng/mLへと3.1倍(95%CI:2.4~4.0、p<0.0001)に上昇した。
(医学ライター 菅野 守)